2025年04月03日

「見える化」をもっと活用しよう

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企業年金の見える化、すなわち運営や運用の情報開示が始まろうとしている。昨年、資産運用立国の議論から見える化が提唱された際、年金基金の関係者や事業主からは、根強い反対論があった。
 
しかし、思い切った情報開示にはメリットもある。第1が年金基金や金融機関さらに事業主への規律付けである。これら年金関係者は加入者の利益に忠実に業務執行を行う責任がある。とは言え、一般的には専門知識の水準が高いとは言えない加入者が、業務執行の適否を判断し、制度運営者を規律付けるのは容易ではない。業務執行の内容を公開することで、外部の有識者の知恵を借りて、加入者のために運営されているかどうかを判断することができる。
 
第2に企業年金の見える化は、事業主の人的資本政策の開示に繋がる。制度の内容を十分に説明すれば、昨今、ESGのS(Society)として、人的資本政策を特に重視している投資家の要求に応えられるだけでなく、人材の採用や引き留めにプラスになるだろう。
   
企業年金には税制上の特典がある上、拠出枠の拡大が示すように、老後の所得保障における、その重要性が増している。企業年金制度が適正に運営、運用されているかは社会的な関心でもある。見える化の要請を積極的に活用し、さまざまな機会に制度運営に関する考え方を開示、説明していくべきではないか。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年04月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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