2022年08月16日

IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(6)-49の全てのIAIGsが公開された-

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1―はじめに

各国・地域の保険監督当局等によるIAIGs(国際的に活動する保険グループ)の指定を巡る状況については、2021年に、4つの保険年金フォーカス「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況-48グループのうちの45グループが明らかに-」(2021.4.1)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(2)-48グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.4.7)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(3)-49グループのうちの46グループが明らかに-」(2021.7.8)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(4)-情報が更新され、49グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.11.18)で報告した。その後、2022年に入って、IAIS(保険監督者国際機構)が1月17日時点でのIAIGsの指定に関する新たな登録簿を公表し、その後新たに追加されたIAIGがカナダの保険監督当局であるOSFIにより公表されたことを受けて、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(5)-情報が更新され、新たに1グループが追加され50グループに-」(2022.2.7)を報告した。

今回、IAISは2022年7月26日付けの情報を更新1したので、その内容を報告する。

2―IAIGsとは

2―IAIGsとは

まずは、繰り返しになるが、IAIGsについて説明しておく。

IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups(国際的に活動する保険グループ)」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAISが定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
1|IAIGs の選定基準
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
 

(1) 国際的活動
・3つ以上の管轄区域において、保険料が計上されていること、及び
・本店所在管轄区域外のGWP(Gross Written Premium:総収入保険料)のグループ全体のGWPに対する割合が10%以上

(2) 規模(3 年移動平均)
・総資産が500 億米ドル以上、又は 
・全体のGWPが100 億米ドル以上

ただし、これらの定量的基準に関わらず、グループ全体ベースでIAIGs の監督に対して責任を有しているGWS(グループ全体の監督者)が、限定された状況において、グループがIAIGs とみなされるかどうかを判断するための裁量権を有している。例えば、(a)自国の保険事業活動が重大である場合、(b)合併及び買収あるいは売却等により、近い将来に基準を満たすあるいは満たさなくなる場合、等が想定されている。
2|今回のIAIGs の指定に関する情報の公表
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。

IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
3|IAIGsに対する監督・規制
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。

このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。それぞれの項目の具体的な内容については、今回のレポートの趣旨ではないので触れないが、例えば、「(2)資本規制」について、IAISはComFrameの一環としてICS(保険資本基準)を策定中である。

3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報

3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報

IAISは、IAIGsの指定に関して、2022年7月26日時点での情報の更新1を行っているので、ここではその内容を報告する。
1|今回の情報更新に基づくIAIGsに指定された保険グループの状況
今回のIAISによる情報更新により、全体で17の管轄区域からの 49のIAIGsの全てが公開されることとなった。新たに公開されたのは、フィンランドからのSampo Groupである。

これにより、49のIAIGsの管轄区域別の内訳は、以下の通りとなっている。
49のIAIGsの管轄区域別の内訳
2|Sampo Groupについて
Sampo Group は、北欧における主要な損害保険会社であり、子会社のIf P&C Insurance Holding Ltdは、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、バルト三国で営業展開している。

2021年のGWP(収入保険料)は5,134百万ユーロ、総資産は61,061百万ユーロとなっている。

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報について報告してきた。

これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定グループの数は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況、さらには保険監督当局のスタンス等を反映して、それぞれの国・地域自体の保険市場の規模や一般的に認識されている大規模な保険グループの数等とは必ずしもリンクする形にはなっていない。

なお、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。

買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略により、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。

各管轄区域においては、今後も適宜、IAIGsの指定の見直し等が行われ、必要に応じて公表されていくことが想定されることになる。

IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2022年08月16日「保険・年金フォーカス」)

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