2022年07月05日

欧州保険会社が2021年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-

文字サイズ

(3) Aegon
AegonのSCRやMCRの計算方法の説明(の一部)は、以下の通りとなっている。

「Aegonは、会計連結法と控除合算法のソルベンシーIIの下で利用可能なグループ統合手法の組み合わせを適用している。ソルベンシーII資本要件は、主としてEEAベースの保険及び再保険会社に対して、会計連結法を用いて適用される。ローカル要件は(暫定的に)同等な第三国(主として、米国の生命保険会社、バミューダ、メキシコ、ブラジル)からの保険及び再保険会社に対して使用される。」としている。

また、内部モデルの使用については、「Aegonにとって最も重要なリスクタイプは、ソルベンシーII PIM(部分内部モデル)の一部として内部モデルでカバーされ、あまり重要でないリスクタイプやビジネスユニットは、ソルベンシーII PIMの一部として標準式でカバーされる。」としている。

ソルベンシーII PIM SCR内の分散化については、「内部モデル内では、過去のデータと専門家の判断を利用して、全てのリスク要因に対して限界確率分布関数が適合されている。」とし、「ソルベンシーII PIMの内部モデルと標準式コンポーネントの間の分散は、ソルベンシーIIの規定に従って、統合テクニック3(IT3)を使用して計算される。 IT3では、内部モデルと標準式の構成要素との間の暗黙の線形相関係数の計算方法について説明している。この相関係数は、平方根公式を使用して合計ソルベンシーII PIM SCRを計算するために使用される。」としている。

E.2ソルベンシー資本要件及び最低資本要件
E.2.1ソルベンシー資本要件
Aegonは、会計連結法と控除合算法のソルベンシーIIの下で利用可能なグループ統合手法の組み合わせを適用している。ソルベンシーII資本要件は、主としてEEA及び英国ベースの保険及び再保険会社に対して、会計連結法を用いて適用される。ローカル要件は(暫定的に)同等な第三国(主として、米国の生命保険会社、バミューダ、ブラジル)からの保険及び再保険会社に対して使用される。

ソルベンシーII PIMに基づくSCR方法論
Aegonは、ソルベンシーIIの下でEEA保険会社の多数のソルベンシー・ポジションを計算するために、部分内部モデル(PIM)を使用している。AegonのPIMは、内部モデル適用プロセスの一部として監督カレッジによって承認された。Aegonにとって、標準式(SF)方法に含まれている業界全体の概算に対して、Aegon特有のモデリングと感応度を含んでいることから、PIMは実際のリスクのよりよい表現である。内部モデルの目的は、SCRにおいてAegonの実際のリスクプロファイルをより良く反映することにある。それゆえ、Aegonにとって最も重要なリスクタイプは、ソルベンシーII PIMの一部として内部モデルでカバーされ、あまり重要でないリスクタイプやビジネスユニットは、ソルベンシーII PIMの一部として標準式でカバーされる。 下記が内部モデルの構造を表している図表である。



Aegon内部モデルは、以下の法的エンティティをカバーしている。

Aegon the Netherlands
・Aegon Levensverzekering N.V
・Spaarkas N.V.
Aegon the UK
・Scottish Equitable plc
Aegon N.V.

ソルベンシーIISCR計算に従うAegon内部の全てのその他のエンティティは、標準式を使用している。

以下のリスクタイプは、ソルベンシーIIPIMの内部モデルコンポ-ネントに基づいてモデル化され る。

ミスマッチリスクカテゴリ内
・Aegon the Netherlands, UK and Aegon N.V.に対する金利リスクと金利ボラティリティリスク
・Aegon UK とAegon N.Vの通貨リスク
投資・カウンターパーティリスクカテゴリ内
・固定金利リスク(スプレッドリスクとデフォールト/ミグレーションリスクの両方)
・SFに基づくプライベートエクイティリスクを除くエクイティレベルリスク
・エクイティボラティリティリスク
・オルタナティブ投資リスク内で、Aegon the Netherlandsの不動産リスクに対してIMを、全てのその他のオルタナティブ投資リスクはSFに基づく。
・Aegon the Netherlandsによって昨年設定された決定論的調整。この特徴は、EIOPAのVA参照ポートフォリオとAegon the Netherlands自身の参照資産ポートフォリオとの間のベーシスリスクによって引き起こされるボラティリティを軽減し、ソルベンシーIIのレビューから生じる変更が制定されるまで実施される。

アンダーライティングリスクカテゴリ内-生命保険アンダーライティングリスク
・Aegon the Netherlands;に対する死亡率パラメータリスク
・Aegon the Netherlands とAegon UKに対する長寿パラメータリスク
・継続率リスク内で、Aegon the Netherlandsにおけるモーゲージ期限前返済リスクとAegon UKにおける契約者行動
・Aegon UKにおける事業費リスク

その他のリスク
・Aegon UKにおけるオペレーショナルリスク
・グループのカウンターパーティデフォールトリスク。2021年12月31日から、AegonはSE plc.の再保険をかけられた外部リンクファンドに対するカウンターパーティデフォールトリスクを把握するために、グループレベルで内部モデルを使用している。Brexitのため、これらのファンドは現在EEA域外の第三者によって保有されている。SE plc.には何らの変更はなく、引き続きそのリスクに対して標準式を使用している。

内部モデルでカバーされていない全てのリスクタイプは、ソルベンシーII PIMの標準式の構成要素の下でカバーされている。ソルベンシーIIPIMの全ての構成要素で使用されているリスク指標は、1年のタイムホライズンに適用される99.5%のリスク値である。欧州委員会委任規則(EU)2015/35(委任法)の附属書XVIII.Dにリストされているように、統合手法3(IT3)を使用して標準式SCRと内部モデルSCRを組み合わせてソルベンシーII PIM SCRを計算する。

ソルベンシーII PIM SCR内の分散効果
ソルベンシーII PIMの下で、Aegonは国単位及びリスクタイプ間の分散効果を計算する。標準式の構成要素内では、規定されたSF相関行列に従って分散化が決定される。

内部モデル内では、過去のデータと専門家の判断を利用して、全てのリスク要因に対して限界確率 分布関数が適合されている。組み合わされた全てのリスク要因の全体的な同時確率分布関数は、リスク間の依存構造を考慮に入れる。この共同分布からのサンプルをシミュレートする200万シナリオからの損失は、全体的な経験的損失分布関数を当てはめるために使用され、これから99.5%のポイントを取ることによって200年に1回の損失を導き出す。

シナリオはシナリオジェネレータと依存構造を使用して生成され、市場データと専門家の判断に基づくリスクドライバー間の依存関係(相関)が定義される。各シナリオには、金利、株式リターン、死亡率などのリスク要因の値が含まれている。

合計ネットSCR(分散効果反映後)は、自己資本における200年に1回の損失の平均によって決定される。分散はリスクタイプの独立型SCRの合計と合計ネットSCRの差として定義される。

ソルベンシーII PIMの内部モデルと標準式コンポーネントの間の分散は、ソルベンシーIIの規定に従って、統合テクニック3(IT3)を使用して計算される。

2|USP(Undertakings Specific Parameters:会社固有パラメータ)の使用状況
生命保険及び健康保険改訂リスク、損害保険(健康保険の一部を含む)の保険料及び責任準備金リスクに対しては、標準式で使用されているパラメータの代わりに、監督当局の承認を得て、会社固有のパラメータUSPを用いることができる。

大手5グループのうち、以下の3グループは、USPの使用に関して明示的に記述している。

・Allianzは、Fragonard Assurance S.A.とAGA International.の損害保険の保険料リスクの標準偏差に対してUSPを使用している(また、USPの使用によるSCR及びMCRへの影響は1%未満であるとしている)。

・Generaliは、Europe Assistance会社とイタリアの会社DAS(Difesa Automobilistica Sinistri)と新規に取得したCattolicaグループの会社のSCRの計算に、USPを使用している。

・Avivaは、SCRの算定にUSPを使用していない。

AXA、Aegonについては文中に明示的な記載はないが、QRTsによれば、USPは使用していない。
3|簡素化(Simplification)の使用
Allianzは、標準式の計算におけるカウンターパーティデフォールトリスクモジュールに簡素化を使用している。

その他の会社は、SCRの算出における簡素化は使用していない。

3―まとめ

3―まとめ

今回のレポートでは、欧州大手保険グループ各社の2021年のSFCR(含むQRTs(定量的報告テンプレート))の内容から、SCRとMCRの計算方法の説明について報告した。

次回のレポートでは、内部モデルの使用状況及び分散効果の状況等について報告する。
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

(2022年07月05日「保険・年金フォーカス」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【欧州保険会社が2021年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

欧州保険会社が2021年のSFCR(ソルベンシー財務状況報告書)を公表(3)-SFCRからの具体的内容の抜粋報告(その2)-のレポート Topへ