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納付率のさらなる向上に向けて、自動引去りの推進が課題~年金改革ウォッチ 2022年6月号

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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1 ―― 先月までの動き
○社会保障審議会 年金事業管理部会
5月24日(第61回) 日本年金機構の令和3年度業務実績、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo61_00001.html (資料)
2 ―― ポイント解説:国民年金保険料の納付率向上の現状と課題

なお、納付率が改善している要因として、免除率の上昇が挙げられることもある(図表4)*3。厚生労働省の分析によると*4、年度内の納付率が2019年度から2020年度にかけて2.24ポイント上昇したうち、1.25ポイントは両年度(24か月)ずっと第1号被保険者だった人による影響で、1.14ポイントは2019年度に納付対象月があるものの2020年度は申請全額免除になった人による影響となっている。他方で、2019年度は申請全額免除で2020年度に納付対象月がある人による影響が-0.38ポイントある*5。免除率の上昇が主因とは言い切れないが、一定の影響が推察される。
*3 保険料が免除された場合は、保険料を納付した場合と比べて将来の年金額が少なくなる。例えば、保険料の全額を免除された場合、免除期間分の年金額は納付した場合の半額となる。
*4 厚生労働省年金局(2021)「令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況」p.14.
*5 他の影響には、2020年度のみ学生納付特例の対象者(0.97)、2020年度の新規対象者(-0.80)などがある。
行動経済学に基づく研究では、将来を軽視する人ほど国民年金保険料を納めない傾向が示されている*6。このように自分の意志では納めにくい場合、自動引去りを契約すれば、窓口での支払いより納付が継続しやすいと言われている。

今回の年金事業管理部会で示された報告書案では、20歳到達前月に自動引去りを含む加入案内を送付(以前から実施)、新規の3か月未納者に自動引去りの書類を送付(2021年9月から実施)、などの取組みが示されている。6月下旬に示される報告書案の改訂版では、これらの効果に注目したい。
*6 例えば、中嶋邦夫・臼杵政治(2005)「国民年金の未納要因:主観的な視点の考慮」。国民年金保険料の未納要因に関する研究を整理した近年のものには、阿部由人(2017)「国民年金未納要因の計量分析」がある。
*7 総務省行政評価局(2018)「年金業務の運営に関する行政評価・監視-国民年金業務を中心として-」p.51.
(2022年06月07日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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