- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 年金 >
- 公的年金 >
- 年金改革ウォッチ 2020年6月号~ポイント解説:2020年改正法案の修正と付帯決議
2020年06月02日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
1 ―― 先月までの動き
先月は、年金改革に関係する審議会等が開催されなかった。
2 ―― ポイント解説:2020年改正法案の修正と付帯決議
1|法案の修正:障害年金と児童扶養手当の併給時の配慮と検討規定の追加
衆議院厚生労働委員会では、審議の序盤に、野党が政府案に対する修正案と年金積立金等に関する法案とを提出していた。しかし、審議の最終日にそれらが撤回され、新たに提出された与野党共同の修正案が全会一致で可決された(修正部分以外の政府案は賛成多数で可決)。
修正内容には、改正法の施行に直接関係するものと、附則の検討規定の追加がある。
施行に直接関係するのは、障害年金と児童扶養手当の併給で複数の子を持つ場合への配慮*2で、野党のみの修正案に含まれていた内容である。
附則の検討規定は、政府案に3項目あったが、野党のみの修正案をもとに、さらに3項目が追加された。今回の改正は小粒で次期改正に期待する意見もあるが、これらの6項目が優先課題になろう。
衆議院厚生労働委員会では、審議の序盤に、野党が政府案に対する修正案と年金積立金等に関する法案とを提出していた。しかし、審議の最終日にそれらが撤回され、新たに提出された与野党共同の修正案が全会一致で可決された(修正部分以外の政府案は賛成多数で可決)。
修正内容には、改正法の施行に直接関係するものと、附則の検討規定の追加がある。
施行に直接関係するのは、障害年金と児童扶養手当の併給で複数の子を持つ場合への配慮*2で、野党のみの修正案に含まれていた内容である。
附則の検討規定は、政府案に3項目あったが、野党のみの修正案をもとに、さらに3項目が追加された。今回の改正は小粒で次期改正に期待する意見もあるが、これらの6項目が優先課題になろう。
*2 政府案で、障害基礎年金を受給するひとり親も、障害基礎年金と児童扶養手当との差額を受給できるようになるが、その際に子が多いほど差額が少なくなることを回避する内容。
2|附帯決議:適用拡大の推進や基礎年金の水準低下への対策など広範囲
附帯決議は、改正法(附則)ほどの強制力はないものの、政府が尊重する事項となる。
厚生年金の適用拡大では、今回の改正で試案(オプション試算)より後退する形での段階的な拡大*3となった企業規模要件について、早期撤廃(すなわち全企業規模への拡大)の速やかな検討を求めている。対象企業の負担増加には支援の拡充で対応する方針も示されており、社会全体で負担を分かち合いながら適用拡大を進める、という方向性が明示されている。ただ、改正法附則には、「次の財政検証等を踏まえ」と記載されているため、検討開始がどの程度早期化されるかは不透明と言えよう。
基礎年金については、附則の修正(図表1)で、水準低下を踏まえた様々な見直しの検討を規定しているが、付帯決議では拠出期間の延長(40→45年)を特に取り上げている。延長の最大課題は国庫負担だと厚労相も答弁しており、新型コロナ対策の財政負担がある中で、さらに難しい課題となろう。
法案の早期成立で、次期改正までの冷静な検討の時間が増えた。腰を据えた議論を期待したい。
附帯決議は、改正法(附則)ほどの強制力はないものの、政府が尊重する事項となる。
厚生年金の適用拡大では、今回の改正で試案(オプション試算)より後退する形での段階的な拡大*3となった企業規模要件について、早期撤廃(すなわち全企業規模への拡大)の速やかな検討を求めている。対象企業の負担増加には支援の拡充で対応する方針も示されており、社会全体で負担を分かち合いながら適用拡大を進める、という方向性が明示されている。ただ、改正法附則には、「次の財政検証等を踏まえ」と記載されているため、検討開始がどの程度早期化されるかは不透明と言えよう。
基礎年金については、附則の修正(図表1)で、水準低下を踏まえた様々な見直しの検討を規定しているが、付帯決議では拠出期間の延長(40→45年)を特に取り上げている。延長の最大課題は国庫負担だと厚労相も答弁しており、新型コロナ対策の財政負担がある中で、さらに難しい課題となろう。
法案の早期成立で、次期改正までの冷静な検討の時間が増えた。腰を据えた議論を期待したい。
*3 オプション試算では企業規模要件の撤廃が最も小規模な拡大案だったが、成立した改正法では、2022年10月に正社員100人超、2024年10月に同50人超の企業へと拡大される。
*4 附帯決議の内容を、衆参の比較も考慮して要素ごとに分割して整理した(附則と重複する事項は割愛)。本稿執筆時点では参議院の附帯決議が文書として未公開で、中継動画から書き起こした。そのため、用字や句読点が相違している可能性がある。
(2020年06月02日「保険・年金フォーカス」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1859
経歴
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
中嶋 邦夫のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/08 | 基礎年金の底上げ策に伴って厚生年金の補てんを求めるのは妥当か~年金改革ウォッチ 2025年4月号 | 中嶋 邦夫 | 保険・年金フォーカス |
2025/04/07 | SNS時代の年金改革-法案提出を巡る議論の本質は… | 中嶋 邦夫 | 研究員の眼 |
2025/03/11 | 高齢期に働く際の年金減額は、金持ち優遇批判等に配慮しつつ対象縮小へ~年金改革ウォッチ 2025年3月号 | 中嶋 邦夫 | 保険・年金フォーカス |
2025/03/05 | 次期年金改革案(調整期間の一致)を避けた場合に起きる問題 | 中嶋 邦夫 | ニッセイ年金ストラテジー |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【年金改革ウォッチ 2020年6月号~ポイント解説:2020年改正法案の修正と付帯決議】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
年金改革ウォッチ 2020年6月号~ポイント解説:2020年改正法案の修正と付帯決議のレポート Topへ