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2020年05月19日
欧州大手保険Gの2019年の生命保険新契約業績-商品タイプ別・地域別の販売動向・収益性の状況-
1―はじめに
欧州大手保険グループの2019年決算数値が、2月から4月にかけて、投資家向けのプレゼンテーション資料やAnnual Reportの形で公表された。
前回のレポート1では、生命保険事業を中心とした地域別の事業展開の状況について報告した。
新たな規制・低金利環境下で、各社とも貯蓄・年金商品等の伝統的な利率保証付商品から、ユニットリンク型商品や保障・医療商品へのシフトを志向している。こうした状況は、グループ全体として基本的には同じ方向に向かっているが、その実態は地域毎に若干異なっている。これらは、各地域の保険市場や運用市場の状況やそれらを反映した保険商品の収益性等に関係している。
今回のレポートでは、2019年の生命保険事業の新契約業績について、商品タイプ別、地域別の販売動向及び新契約マージン等の数値を通じて、欧州大手保険グループの商品シフトの現状及び収益性の状況を報告する。
1 基礎研レポート「欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2019年決算数値等に基づく現状分析-」(2020.5.8)
前回のレポート1では、生命保険事業を中心とした地域別の事業展開の状況について報告した。
新たな規制・低金利環境下で、各社とも貯蓄・年金商品等の伝統的な利率保証付商品から、ユニットリンク型商品や保障・医療商品へのシフトを志向している。こうした状況は、グループ全体として基本的には同じ方向に向かっているが、その実態は地域毎に若干異なっている。これらは、各地域の保険市場や運用市場の状況やそれらを反映した保険商品の収益性等に関係している。
今回のレポートでは、2019年の生命保険事業の新契約業績について、商品タイプ別、地域別の販売動向及び新契約マージン等の数値を通じて、欧州大手保険グループの商品シフトの現状及び収益性の状況を報告する。
1 基礎研レポート「欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2019年決算数値等に基づく現状分析-」(2020.5.8)
2―欧州大手保険グループ各社の新契約業績動向等
この章では、欧州大手保険グループ各社の生命保険事業について、新契約の年換算保険料(Annual Premium Equivalent :APE)や新契約保険料現在価値(Present Value of New Business Premium:PVNBP)及び新契約価値(New Business Value:NBV)や新契約マージン(New Business Margin)の状況等について、商品タイプ別、地域別に報告する。
なお、新契約マージン等の定義については、その分母及び分子の考え方等について各社各様であるが、ここでは各社の公表数値に基づいて報告する2。また、以下の図表は、会社が公表している数値に基づいて、筆者が作成したものである。
2 新契約価値(NBV)について、Allianz、Generali、Aviva、Aegon、ZurichはMCEV、AXA、PrudentialはEEVベースである。なお、新契約価値の地域別状況等については、前回のレポートを適宜参照していただきたい。
なお、新契約マージン等の定義については、その分母及び分子の考え方等について各社各様であるが、ここでは各社の公表数値に基づいて報告する2。また、以下の図表は、会社が公表している数値に基づいて、筆者が作成したものである。
2 新契約価値(NBV)について、Allianz、Generali、Aviva、Aegon、ZurichはMCEV、AXA、PrudentialはEEVベースである。なお、新契約価値の地域別状況等については、前回のレポートを適宜参照していただきたい。
1|AXA
(1)全体の状況3
2019年の新契約価値(NBV)は、2018年に比べて2.5%減少(為替レートや範囲等を同一とした「比較ベース」では、1%増加、以下同様)して、25.42億ユーロとなった。
新契約マージン(NBV Margin4)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2018年に比べて0.2%ポイント(0.5%ポイント)低下して、3.7%となった。
新契約マージン(NBV Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2018年に比べて2.9%ポイント(0.7%ポイント)増加して、42.2%となった。保障における前提の更新と有利な契約ミックスにより2.2%ポイント増加したが、金利の低下と費用の増加により一部相殺されて、0.7%ポイントの増加となった。
また、2018年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBP)は、2.4%(15%)増加して、685.99億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APE)は、9.1%減少(ほぼ横ばい)して、60.29億ユーロとなった。
なお、新契約IRR(内部収益率)は、2.9%ポイント減少して、15.8%となった。
(1)全体の状況3
2019年の新契約価値(NBV)は、2018年に比べて2.5%減少(為替レートや範囲等を同一とした「比較ベース」では、1%増加、以下同様)して、25.42億ユーロとなった。
新契約マージン(NBV Margin4)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2018年に比べて0.2%ポイント(0.5%ポイント)低下して、3.7%となった。
新契約マージン(NBV Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2018年に比べて2.9%ポイント(0.7%ポイント)増加して、42.2%となった。保障における前提の更新と有利な契約ミックスにより2.2%ポイント増加したが、金利の低下と費用の増加により一部相殺されて、0.7%ポイントの増加となった。
また、2018年に比べて、新契約保険料現在価値(PVNBP)は、2.4%(15%)増加して、685.99億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APE)は、9.1%減少(ほぼ横ばい)して、60.29億ユーロとなった。
なお、新契約IRR(内部収益率)は、2.9%ポイント減少して、15.8%となった。
3 ここでの具体的な数値は、(2)以下の図表等も参照していただきたい(以下、同様)。
4 これをそのまま翻訳すると「新契約価値マージン」となるが、ここでは他社に合わせて「新契約マージン」と翻訳している。
(2)新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、地域別内訳
新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
商品タイプ別の内訳は、グループ全体では、保障が38%、医療が16%、一般勘定貯蓄が23%、ユニットリンクが18%、ミューチュアルファンド等が6%であった。
これらの商品タイプ別の構成比は、地域別に大きく異なっており、欧州では保障、医療、一般勘定貯蓄、ユニットリンクの構成比にそれほど大きな差異はないが、米国ではユニットリンクやミューチュアルファンドが中心、アジアではユニットリンクの構成比は低く、保障が中心になっている。
これをさらに各国別で見てみると、欧州やアジア諸国間でも状況は一律ではなく、それぞれの国の保険市場の特徴が反映された形になっている。
新契約年換算保険料(APE)の商品タイプ別、地域別内訳は、以下の図表の通りとなっている。
商品タイプ別の内訳は、グループ全体では、保障が38%、医療が16%、一般勘定貯蓄が23%、ユニットリンクが18%、ミューチュアルファンド等が6%であった。
これらの商品タイプ別の構成比は、地域別に大きく異なっており、欧州では保障、医療、一般勘定貯蓄、ユニットリンクの構成比にそれほど大きな差異はないが、米国ではユニットリンクやミューチュアルファンドが中心、アジアではユニットリンクの構成比は低く、保障が中心になっている。
これをさらに各国別で見てみると、欧州やアジア諸国間でも状況は一律ではなく、それぞれの国の保険市場の特徴が反映された形になっている。
(3)新契約マージン(対APE)の商品タイプ別状況
新契約マージン(対APE)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。
新契約年換算保険料について、2010年から2019年にかけては、一般勘定の保障・医療の構成比が31%から54%へと23%ポイントと大きく上昇したが、一般勘定貯蓄の構成比は25%から23%へ2%ポイント低下し、ユニットリンクの構成比は31% から18%へと13%ポイント低下した。
このような商品シフトを反映して、現在のような低金利下においても、販売や収益への影響を相対的に軽減できる対策を講じてきた結果として、全体の新契約マージン(対APE)は2010年の22%から、2018年の42.2%へと大きく上昇している。
新契約マージン(対APE)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。
新契約年換算保険料について、2010年から2019年にかけては、一般勘定の保障・医療の構成比が31%から54%へと23%ポイントと大きく上昇したが、一般勘定貯蓄の構成比は25%から23%へ2%ポイント低下し、ユニットリンクの構成比は31% から18%へと13%ポイント低下した。
このような商品シフトを反映して、現在のような低金利下においても、販売や収益への影響を相対的に軽減できる対策を講じてきた結果として、全体の新契約マージン(対APE)は2010年の22%から、2018年の42.2%へと大きく上昇している。
(4)新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の地域別状況
新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りである。
これによれば、新契約マージン(対APE)について、欧州ではスペイン、ドイツ、ベルギー、スイスが高い水準となっているが、フランスや米国の水準はグループ全体の水準を下回っている。アジアでは日本の水準が高いものとなっている。2018年との比較では、日本の水準が契約構成がプラスに働いて、さらに高くなったが、フランスでは保険数理上の前提の更新によるプラス効果が低金利によるマイナスの影響で相殺され、アジアも低金利のマイナスの影響を受けて、水準が低下した。
なお、IRRについては、(i)不利な市場環境、グループ医療の国際事業のシェアの低下、フランスでの費用の増加、(ii)香港の低金利と日本の保障商品内の商品構成の変化、によるマイナスの影響により、(iii)主にスイスとスペインの欧州でのIRRの改善によって一部相殺されたものの、結果としてグループ全体では18.7%から15.8%に低下した。
新契約マージン(対APE)及びIRR(内部収益率)の地域別状況は、以下の図表の通りである。
これによれば、新契約マージン(対APE)について、欧州ではスペイン、ドイツ、ベルギー、スイスが高い水準となっているが、フランスや米国の水準はグループ全体の水準を下回っている。アジアでは日本の水準が高いものとなっている。2018年との比較では、日本の水準が契約構成がプラスに働いて、さらに高くなったが、フランスでは保険数理上の前提の更新によるプラス効果が低金利によるマイナスの影響で相殺され、アジアも低金利のマイナスの影響を受けて、水準が低下した。
なお、IRRについては、(i)不利な市場環境、グループ医療の国際事業のシェアの低下、フランスでの費用の増加、(ii)香港の低金利と日本の保障商品内の商品構成の変化、によるマイナスの影響により、(iii)主にスイスとスペインの欧州でのIRRの改善によって一部相殺されたものの、結果としてグループ全体では18.7%から15.8%に低下した。
2|Allianz
(1)全体の状況
2019年の新契約価値(NBV)は、2018年に比べて3.8%増加して、21.67億ユーロとなった。
新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2018年に比べて0.3%ポイント低下して、3.2%となった。これは会社の目標水準の3%を超えている。
新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2018年に比べて2.2%ポイント低下して、22.7%となった。
また、新契約保険料現在価値(PVNBP)は14.6%増加して670.46億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APE)は13.9%増加して、95.62億ユーロとなった。
(1)全体の状況
2019年の新契約価値(NBV)は、2018年に比べて3.8%増加して、21.67億ユーロとなった。
新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約保険料現在価値(PVNBP))は、2018年に比べて0.3%ポイント低下して、3.2%となった。これは会社の目標水準の3%を超えている。
新契約マージン(New Business Margin)(=新契約価値/新契約年換算保険料(APE))は、2018年に比べて2.2%ポイント低下して、22.7%となった。
また、新契約保険料現在価値(PVNBP)は14.6%増加して670.46億ユーロとなり、新契約年換算保険料(APE)は13.9%増加して、95.62億ユーロとなった。
(2)新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況
新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。
新契約保険料現在価値(PVNBP)の構成比は、保証付貯蓄&年金が18.9%(2018年は18.0%、以下同様)、高資本効率商品が45.5%(41.5%)、ユニットリンクが20.2%(25.8%)、保障&医療が15.4%(14.7%)、で、高資本効率商品へのシフトが成功裏に行われてきている。これにより、(保証付貯蓄・年金以外の)高資本効率商品等の会社の優先課題商品のシェアは、2015年の64%から2019年の81%に上昇した。
一方で、2019年の新契約マージン(対PVNBP)は、2017年から2018年にかけての状況とは逆に、2018年に比べて、横ばいだった保障・医療を除く商品タイプで低下した。
新契約保険料現在価値(PVNBP)及び新契約マージン(対PVNBP)の商品タイプ別状況は、以下の図表の通りとなっている。
新契約保険料現在価値(PVNBP)の構成比は、保証付貯蓄&年金が18.9%(2018年は18.0%、以下同様)、高資本効率商品が45.5%(41.5%)、ユニットリンクが20.2%(25.8%)、保障&医療が15.4%(14.7%)、で、高資本効率商品へのシフトが成功裏に行われてきている。これにより、(保証付貯蓄・年金以外の)高資本効率商品等の会社の優先課題商品のシェアは、2015年の64%から2019年の81%に上昇した。
一方で、2019年の新契約マージン(対PVNBP)は、2017年から2018年にかけての状況とは逆に、2018年に比べて、横ばいだった保障・医療を除く商品タイプで低下した。
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