2019年10月01日

年金改革ウォッチ 2019年10月号~ポイント解説:厚生年金適用拡大の方向性

保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任   中嶋 邦夫

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1 ―― 先月までの動き

年金事業管理部会では、平成30年度および中期目標期間における業務実績の評価について報告が行われた。働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会では議論のとりまとめが行われ、年金部会に議論の場が移った。官邸では新たに全世代型社会保障検討会議が開催され、近年の厚生年金の状況などが資料で示された。
 
○社会保障審議会  年金事業管理部会
9月12日(第45回) 日本年金機構の平成30年度及び第2期中期目標期間の業務実績の評価、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06686.html  (資料)
 
○働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会(年金局)
9月20日(第8回) 議論のとりまとめ、その他
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208525_00014.html   (資料)
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000200771_00001.html   (報告書・9/26公開)
 
○全世代型社会保障検討会議
9月20日(第1回) 全世代型社会保障検討会議の開催について、運営要領案、基礎資料
URL https://www.kantei.go.jp/jp/singi/zensedaigata_shakaihoshou/dai1/siryou.html  
(資料)
 
○社会保障審議会  年金部会
9月27日(第10回) 今後の年金制度改正、被用者保険の適用拡大
URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06809.html   (開催案内)
 

2 ―― ポイント解説:厚生年金適用拡大の方向性

2 ―― ポイント解説:厚生年金適用拡大の方向性

厚生年金の適用拡大については、働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会で議論が取りまとめられ、その結果を受けて年金部会でも議論された。本稿では今後の方向性を確認する*1
 
*1 パート労働者への適用拡大は2019年6月号、パート労働者以外への適用拡大は2019年4月号2018年10月号、両者の年金財政への影響については2019年9月号を参照。
1|短時間(パート)労働者の要件:勤務期間は拡大、企業規模は企業支援と併せて段階拡大、他は継続
図表2 厚生年金の適用事業所の範囲 厚生年金の適用拡大は、短時間(パート)労働者の拡大と、それ以外の拡大とに大別される。短時間労働者の拡大は、短時間労働者に特有な5つの要件のどれをどの程度緩和するかが、主な論点となっている(図表1)。

同懇談会で見直しの必要性が「共有された」要件は勤務期間である。ただ、具体的な要件(数値)は共有に至らず、厚生年金の通常の基本的な適用要件(2か月超)や雇用保険(31日以上の見込み)に合わせるという意見の提示にとどまった。

焦点となった企業規模は、拡大の必要性が「示された」という表現にとどまり、必要性の共有には至らなかった。また、実施時期等への配慮や支援措置の必要性も「指摘された」という表現にとどまった。

他の要件は慎重な「検討」の必要性が示された等、継続検討を求める表現にとどまった。

今後は勤務期間や企業規模の具体的な要件(数値)の議論に移るが、過去の改正経緯を考慮すれば、審議会(年金部会)ではなく政府・与党間の協議で決まる可能性が高いだろう。
2|短時間(パート)労働者以外:個人事業所の拡大は次回の論点。複数勤務時の合算等は継続検討
図表2 厚生年金の適用事業所の範囲 短時間(パート)労働者以外の主な論点は、現在は任意適用となっている個人事業所(特定業種または従業員5人未満)への拡大である(図表2)*2。これに対しては、現行要件の経緯や現状などを踏まえつつ見直しを検討すべきとの認識が示された。原案では「検討すべき」と弱めながら認識の「共有」となっており、次の財政検証後の見直しに前向きな印象を受けた。しかし、最終的には「示された」に変更されており、この問題の解決の難しさを感じさせる。
図表3 新しい働き方への対応の現状と課題 それ以外の論点には、近年増加している複数事業所での就労者や雇用類似の労働者への拡大がある(図表3)。複数事業所での就労者は、現行では事業所単位で適用が判断されている。しかし生計維持のための掛け持ち労働者を念頭に労働時間等を合算した判定を検討すべきなどの意見があり、実務の可能性を踏まえた見直しの議論や現行制度の事務負荷軽減の必要性が指摘された。雇用類似の労働者(個人で企業へ役務を提供する自営業)については、被用者性の高さから保護を図る観点が示され、制度や実務の課題も踏まえた継続的な議論の必要性が指摘された。システム刷新を踏まえた議論が注目される*3
 
*2 2004年改正の過程論点となり、2007年以降の適用拡大を巡る議論の中で連合や経団連などから主張されてきた。
*3 日本年金機構では、国民や企業の負荷軽減、年金記録問題の未然防止、番号制度への対応等のため、システムの刷新を進めている(https://www.nenkin.go.jp/sasshin/project/gaiyou.html)。
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保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫 (なかしま くにお)

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度

(2019年10月01日「保険・年金フォーカス」)

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