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中国大手プラットフォーマーBATJによる保険分野への進出【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(34)

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 片山 ゆき
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1-苦戦する百度、積極的なアリババ・テンセント、後発追い上げの京東
一方、苦戦しているのは百度である。百度は2015年にアリアンツの中国法人とのネット専業損保の設立意向を表明したが、その後設立許可は発表されていない。また、2016年には中国太平洋財産保険と傘下の百度鵬寰資産管理(北京)で損害保険会社の設立意向を発表した。しかし、2018年10月には、両社の設立に向けた提携を終了する旨、発表している。設立の申請はしたものの、なかなか許可が下りないのが現状のようである。
その百度の動きを横目に、後発で追い上げているのが京東である。EC第2位の京東は、2018年4月に、独アリアンツの中国法人(損保)へ30%の出資を実現させ、第2位の株主となった。京東側は、アリアンツが長年蓄積した保険に関するノウハウを活用することができ、アリアンツ側は京東が保有する3億人のビッグデータを活用することも可能だ。
中国におけるプラットフォーマーは、全体的にみて、損保分野への進出や検討が進んでおり、現時点で、生保分野は信美人寿相互保険(アリババ)、和泰人寿(テンセント)の2社のみとなっている。
以下ではアリババ系の信美人寿の経営状況を取り上げて紹介する。
2-プラットフォーマー系生保元年、進むアリババ経済圏の顧客の囲い込み
一方、ネット販売を中心としたプラットフォーマー系の相互保険会社である信美人寿は、初年度である2017年の収入保険料が4億7,404万元となった。生保84社のうち67位で、市場全体でみると1%にも満たない(0.02%)1。ただし、2017年5月に開業後わずか半年ほどであるということを考えると善戦していると言えよう。
信美人寿は、発起会員会社であるアントフィナンシャルとの連携を強めている。アリペイなどネット決済を活用し、手続きがスマホで簡単にできる相互保険商品を提供している。団体保険という形をとりながら、発起会員会社やその従業員・親族など、対象を特定した上での保障提供を行っている2。
信美人寿の2017年の経営状況を降り返ってみると、営業収入の総額は5億618万元で、そのうち保険料収入が93.7%を占めた(図表2)。運用収益は4,482万元であったが、売却可能金融資産の売却収益及び資本保証金の利息収入によるものである。運用は主に、発起会員の1社である天弘ファンド管理会社の資産運用商品にて運用されている。2017年の営業支出は6億7,481億元で、そのうち責任準備金が64.0%、事業費が35.7%を占めた。最終的な純利益は1億6,893億元のマイナスとなっている。
2017年に販売された64商品のうち、重大疾病などを含む健康保険が45商品、生命保険が12商品、ケガなどの傷害保険が7商品と、健康や医療に関する保険の取り揃えが多い。一方、売筋商品をみると、上位3商品は団体養老保険、年金保険、団体年金保険と貯蓄性保険が中心となっており、当該3商品で保険料収入の94%を占めた。
保険経営における販売チャネル、運用、決済に至るまで、アリババ経済圏が保有するツールを活用し、顧客を経済圏内に囲い込んでいることがわかる。
1 生保84社には、年金、医療保険専門の保険会社も含む。
2 拙著「IT×保険で、相互保険を再定義-中国初の生保相互保険会社の誕生」(保険年金フォーカス・中国保険市場の最新動向(30)、2018年2月20日発行)
(2018年12月18日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1784
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019~2020年度・2023年度~)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員教授(2024年度~)
・千葉大学客員准教授(2023年度) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
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