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2018年10月01日
欧州大手保険グループの2018年上期末SCR比率の状況について-ソルベンシーIIに基づく数値結果報告-
(3)トピック
会社は、完全な内部モデルの使用に向けて、引き続き監督当局のIVASSと交渉中としているが、2018年上期末でも両者の差異は20%ポイントとなっており、引き続き大きく乖離している。
なお、Generaliは、2015年から、国際的な事業展開の最適化を図ることに取り組んでいるが、これまでに、売却による10億ユーロのキャッシュ生成という目標に対して、署名ベースで15億ユーロのキャッシュ生成を達成したとしている。具体的には、この1年間で、以下の取引が行われている。
・取引完了 2017年7月 グアテマラの事業売却
2018年2月 オランダの事業のASRへの売却
2018年4月 パナマ及びコロンビアの事業売却
2018年7月 Generali PanEuropeのLCCG(Life Company Consolidation Group)への売却
・取引署名 2017年7月 日本における事業のランオフ開始
2017年12月 チュニジアの事業売却
2018年4月 ベルギーの事業のAthora Holdingへの売却
2018年7月 Generali Worldwide及びGenerali LinkのLCCGへの売却
なお、これらの取引によるグループのSCR比率への影響は、例えば、オランダの事業売却で1.5%ポイント、ベルギーの事業売却で2.6%ポイント、Generali Worldwide及びGenerali Linkの売却により0.9%ポイントであるとしている。
さらに、Generaliは、7月にドイツの生命保険ユニットであるGenerali Leben1をViridium Groupに売却することを表明2している。これにより、金利リスクへのエクスポジャーを大幅に削減し、リスク資本収益率を改善させることができ、SCR比率が2.6%ポイント上昇すると想定している。
一方で、Generaliは、6月にFuture Groupとの間で、インドにおける保険会社の出資比率を49%に引き上げる契約を締結しており、インド市場を成長の可能性が非常に高いものであると位置付けている。
このように、Generaliは、事業の売却等を積極的に行い、地理的最適化を進める中で、資本ポジションを向上させてきている。
Generaliはまた、伝統的な新契約の保証利率を0%にするとの目標について、2018年上期で14bps(対2017年上期で▲11bps)、ユーロ地域に限れば1bpになったとしている。
さらに、保有契約の保証利率を1.5%にするとの目標については、2018年上期末で1.39%となり、達成されたとしている。この水準は2015年末に比べて、42bpsの引き下げとなっている。なお、このうち、Generali Lebenの合意と地理的最適化プログラムの影響が20bpsであるとしている。
このように、Generaliは戦略的な数値目標を立てて、その目標を着実に達成してきている。
1 Generali Lebenは、Generali Deutschlandの約4百万の保険契約の責任準備金の約36%を占めている。Generali Deutschlandは、2017年において、ドイツで9.6%の市場シェアを有し、160億ユーロの保険料収入がある。
2 このM&Aについては、ドイツの保険監督当局であるBaFinが、集中的に調査し、保険契約者の保護措置に関する懸念が生じないことを慎重に審査することを表明している。
会社は、完全な内部モデルの使用に向けて、引き続き監督当局のIVASSと交渉中としているが、2018年上期末でも両者の差異は20%ポイントとなっており、引き続き大きく乖離している。
なお、Generaliは、2015年から、国際的な事業展開の最適化を図ることに取り組んでいるが、これまでに、売却による10億ユーロのキャッシュ生成という目標に対して、署名ベースで15億ユーロのキャッシュ生成を達成したとしている。具体的には、この1年間で、以下の取引が行われている。
・取引完了 2017年7月 グアテマラの事業売却
2018年2月 オランダの事業のASRへの売却
2018年4月 パナマ及びコロンビアの事業売却
2018年7月 Generali PanEuropeのLCCG(Life Company Consolidation Group)への売却
・取引署名 2017年7月 日本における事業のランオフ開始
2017年12月 チュニジアの事業売却
2018年4月 ベルギーの事業のAthora Holdingへの売却
2018年7月 Generali Worldwide及びGenerali LinkのLCCGへの売却
なお、これらの取引によるグループのSCR比率への影響は、例えば、オランダの事業売却で1.5%ポイント、ベルギーの事業売却で2.6%ポイント、Generali Worldwide及びGenerali Linkの売却により0.9%ポイントであるとしている。
さらに、Generaliは、7月にドイツの生命保険ユニットであるGenerali Leben1をViridium Groupに売却することを表明2している。これにより、金利リスクへのエクスポジャーを大幅に削減し、リスク資本収益率を改善させることができ、SCR比率が2.6%ポイント上昇すると想定している。
一方で、Generaliは、6月にFuture Groupとの間で、インドにおける保険会社の出資比率を49%に引き上げる契約を締結しており、インド市場を成長の可能性が非常に高いものであると位置付けている。
このように、Generaliは、事業の売却等を積極的に行い、地理的最適化を進める中で、資本ポジションを向上させてきている。
Generaliはまた、伝統的な新契約の保証利率を0%にするとの目標について、2018年上期で14bps(対2017年上期で▲11bps)、ユーロ地域に限れば1bpになったとしている。
さらに、保有契約の保証利率を1.5%にするとの目標については、2018年上期末で1.39%となり、達成されたとしている。この水準は2015年末に比べて、42bpsの引き下げとなっている。なお、このうち、Generali Lebenの合意と地理的最適化プログラムの影響が20bpsであるとしている。
このように、Generaliは戦略的な数値目標を立てて、その目標を着実に達成してきている。
1 Generali Lebenは、Generali Deutschlandの約4百万の保険契約の責任準備金の約36%を占めている。Generali Deutschlandは、2017年において、ドイツで9.6%の市場シェアを有し、160億ユーロの保険料収入がある。
2 このM&Aについては、ドイツの保険監督当局であるBaFinが、集中的に調査し、保険契約者の保護措置に関する懸念が生じないことを慎重に審査することを表明している。
Prudentialもポートフォリオ管理を積極的に行ってきており、例えば、これまでに以下の対応を行ってきている。
・売却・撤退 英国の年金事業の引き受け停止、日本事業の売却、韓国事業の売却、NPHの売却、英国の年金ポートフォリオ120億ポンドの売却
・新規参入 カンボジア、ラオス、アフリカでの事業開始
Prudentialは、2018年4月に、Prudential plcから英国・欧州部門であるM&G Prudentialを分離して、2つの異なる投資特性を有する別々の上場会社にすることを公表している。これにより、Prudential plcは米国とアジアで事業展開する会社となる。また、2018年上期の報告において、Prudentialは、M&G Prudentialが分離された後のPrudential plc3は、香港の保険監督当局が新しいグループ全体の監督者になることを明らかにした。M&G Prudentialのグループ全体の監督者は、引き続き英国の保険監督当局であるPRA(健全性規制機構)が務めることになる。この分離については、2019年末までに完了することが想定されている。
Prudentialは、2018年4月に、併せて、英国の年金ポートフォリオの一部をRothesay Lifeに売却することを公表している。さらに、香港の子会社をアジアに移転するとしている。これらにより、2017年末ベースでは、SCR比率は6%ポイント増加することになる、としている。
3 分離後のPrudential plcは、英国に本社を置き、ロンドン証券取引所でpremium listingされ、香港でprimary listingされ、ニューヨークとシンガポールに上場している会社となる。また、英国又は欧州の顧客を持たないため、ソルベンシーII制度の対象外となる。
・売却・撤退 英国の年金事業の引き受け停止、日本事業の売却、韓国事業の売却、NPHの売却、英国の年金ポートフォリオ120億ポンドの売却
・新規参入 カンボジア、ラオス、アフリカでの事業開始
Prudentialは、2018年4月に、Prudential plcから英国・欧州部門であるM&G Prudentialを分離して、2つの異なる投資特性を有する別々の上場会社にすることを公表している。これにより、Prudential plcは米国とアジアで事業展開する会社となる。また、2018年上期の報告において、Prudentialは、M&G Prudentialが分離された後のPrudential plc3は、香港の保険監督当局が新しいグループ全体の監督者になることを明らかにした。M&G Prudentialのグループ全体の監督者は、引き続き英国の保険監督当局であるPRA(健全性規制機構)が務めることになる。この分離については、2019年末までに完了することが想定されている。
Prudentialは、2018年4月に、併せて、英国の年金ポートフォリオの一部をRothesay Lifeに売却することを公表している。さらに、香港の子会社をアジアに移転するとしている。これらにより、2017年末ベースでは、SCR比率は6%ポイント増加することになる、としている。
3 分離後のPrudential plcは、英国に本社を置き、ロンドン証券取引所でpremium listingされ、香港でprimary listingされ、ニューヨークとシンガポールに上場している会社となる。また、英国又は欧州の顧客を持たないため、ソルベンシーII制度の対象外となる。
5|Aviva
Avivaも会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2017年末で33億ポンド)、職員年金制度(2017年末で15億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。 殆どの重要な完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1)SCR比率の推移
Avivaの会社ベースのSCR比率は、2018年上期末に、基礎的な営業利益の計上により、資本形成が図られたものの、配当支払いに加えて、6億ポンドの株式買戻し計画が開始され、5億ポンドの債務返済が行われたことから、自己資本が12億ポンド減少したことを主因として、2017年末に比べて11%ポイント減少して、187%となった。
監督ベースの数値も、6%ポイント低下して、163%となった。
Avivaも会社ベースと監督ベースの2つのソルベンシー比率を開示している。
Avivaの以下の数値は、会社の株主ビューによるもので、完全に区分された(ring-fenced)有配当ファンド(2017年末で33億ポンド)、職員年金制度(2017年末で15億ポンド)のSCRと自己資本が除かれている。 殆どの重要な完全に区分された有配当ファンドと職員年金制度は、SCRを上回るいかなる資本もグループで認識されておらず、ソルベンシーII資本ベースでは自立している。会社の株主ビューは、株主のリスク・エクスポジャーと適格自己資本でSCRをカバーするグループの能力をより適切に表している、としている。
(1)SCR比率の推移
Avivaの会社ベースのSCR比率は、2018年上期末に、基礎的な営業利益の計上により、資本形成が図られたものの、配当支払いに加えて、6億ポンドの株式買戻し計画が開始され、5億ポンドの債務返済が行われたことから、自己資本が12億ポンド減少したことを主因として、2017年末に比べて11%ポイント減少して、187%となった。
監督ベースの数値も、6%ポイント低下して、163%となった。
(3)トピック
Avivaは、2017年末のSCR比率がWorking Rangeとして設定している150%から180%の上限を上回っていたことから、2018年に、(1)6億ポンドの株式買戻し、(2)約9億ポンドの債務のレバレッジ解消、(3)約5億ポンドの追加M&A、を計画している。
このうち、「(1)6億ポンドの株式買戻し」については、7月末の段階において、3.76億ポンドの買戻しを行っていたが、9月に残りの2.24億ポンドの株式買戻しを行い、完了している。また、「(2)約9億ポンドの債務のレバレッジ解消」については、5月に5億ユーロのTier2債務の返済が行われたが、11月に5.75億ドルの制限付Tier1債務の返済が行われる予定になっている。「(3)約5億ポンドの追加M&A」については、これまでアイルランドのFriends Firstの買収に1.46億ユーロが使用されたが、年内に約4億ポンドが使用されることが計画されている。なお、未使用の予算は債務返済又は2019年に持ち越されるとしている。
Avivaは、2月にジョイントベンチャー持分の売却により、スペイン市場から撤退することを公表しているが、これにより、ソルベンシーIIの資本が150百万ポンド増加するとしている。
また、Avivaは英国のバルク年金やペンション市場に注力してきているが、ソルベンシーIIの下での資本の負荷を軽減するために、8月には、米国のPrudential Financialに対して、年金負債に関連する約10億ポンドの長寿リスクを出再している。
Avivaは、2017年末のSCR比率がWorking Rangeとして設定している150%から180%の上限を上回っていたことから、2018年に、(1)6億ポンドの株式買戻し、(2)約9億ポンドの債務のレバレッジ解消、(3)約5億ポンドの追加M&A、を計画している。
このうち、「(1)6億ポンドの株式買戻し」については、7月末の段階において、3.76億ポンドの買戻しを行っていたが、9月に残りの2.24億ポンドの株式買戻しを行い、完了している。また、「(2)約9億ポンドの債務のレバレッジ解消」については、5月に5億ユーロのTier2債務の返済が行われたが、11月に5.75億ドルの制限付Tier1債務の返済が行われる予定になっている。「(3)約5億ポンドの追加M&A」については、これまでアイルランドのFriends Firstの買収に1.46億ユーロが使用されたが、年内に約4億ポンドが使用されることが計画されている。なお、未使用の予算は債務返済又は2019年に持ち越されるとしている。
Avivaは、2月にジョイントベンチャー持分の売却により、スペイン市場から撤退することを公表しているが、これにより、ソルベンシーIIの資本が150百万ポンド増加するとしている。
また、Avivaは英国のバルク年金やペンション市場に注力してきているが、ソルベンシーIIの下での資本の負荷を軽減するために、8月には、米国のPrudential Financialに対して、年金負債に関連する約10億ポンドの長寿リスクを出再している。
(2018年10月01日「基礎研レポート」)
経歴
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/12/03 | 英国におけるソルベンシーIIのレビューを巡る動向(その8)-2024年における動き(Brexit後の4年間の取組みが最終化)- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2024/11/19 | IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(12)-新たに2社が指定、1社が指定解除されてIAIGsは18の国・地域からの59社に- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2024/11/06 | 曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その9)-カッシーニの卵形線・レムニスケート等- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
2024/10/28 | 最大のメルセンヌ素数が6年ぶりに更新されました-52個目の完全数及びメルセンヌ素数の発見- | 中村 亮一 | 研究員の眼 |
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