2018年01月15日

貸出・マネタリー統計(17年12月)~マネーの色々な所で鈍化が鮮明に

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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3.マネーストック: 通貨供給量の伸びが大幅に鈍化

1月15日に発表された12月のマネーストック統計によると、市中に供給された通貨量の代表的指標であるM2(現金、国内銀行などの預金)平均残高の伸び率は前年比3.6%(前月は4.0%)、M3(M2にゆうちょ銀など全預金取扱金融機関の預貯金を含む)の伸び率は同3.1%(前月は3.4%)とともに大きく低下した(図表9)。貸出の増加ペースが近頃鈍化していることが影響しているとみられる。
(図表9) M2、M3、広義流動性の伸び率/(図表10) 現金・預金の伸び率
M3の内訳を見ると、最大の項目であり、全体の約半分を占める預金通貨(普通預金など)の伸び率が前年比7.2%(前月改定値は7.8%)と大きく低下し(図表10)、M3全体の伸び率低下の主因となった。預金通貨の伸び率低下は3ヵ月連続となる。また、現金通貨の伸び率が前年比4.5%(前月改定値は4.8%)と低下したほか、CDの伸び率(前月改定値0.4%→当月▲0.2%)が再びマイナスに転じたことも、伸び率を押し下げた。なお、準通貨(定期預金など、前月改定値▲1.2%→当月▲1.2%)の伸び率は引き続きマイナスであった(図表10・11)。
(図表11)投資信託・金銭の信託・準通貨の伸び率 M3に投信や外債といったリスク性資産等を含めた広義流動性の伸び率は前年比3.5%(前月は3.9%)とM3以上に低下した(図表9)。伸び率の低下は2ヵ月連続となる。

残高規模が大きい金銭の信託(前月改定値7.6%→当月6.9%)の伸びが低下したうえ(図表11)、為替の(前年比での)円高転換を背景に外債(前月13.6%→当月10.5%)の伸びも低下した。

さらに、家計が大半を保有し、注目度の高い投資信託(元本ベース)の伸び(前月0.5%→当月▲1.2%)がマイナスに転じたことも広義流動性の伸び率押し下げに繋がった(図表11)。投資信託(元本ベース)は前年比横ばい圏での推移が続いており、2015年に見られたような積極的な残高積み増しは確認できない。金融庁の批判を受けて、かつての大ヒット商品であった毎月分配型投信の販売が自粛されていることや、株価上昇に伴って株式投信での利益確定売りが出ている影響もあるが、基本的には家計の慎重な投資マインドを反映したものと考えられる。
 
 

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

(2018年01月15日「経済・金融フラッシュ」)

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