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【アジア・新興国】アジアの保険会社による不動産投資の拡大も踊り場に~当面は中国政府の海外投資規制強化に注目~

増宮 守
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5―中国の保険会社による海外不動産投資の今後
不動産投資拡大を続ける中国の保険会社は、投資対象を国内に止めず、海外不動産にも積極的である。台湾や韓国の保険会社も海外不動産に積極的なものの、特に中国の保険会社は、欧米で巨額の不動産投資を実施し、世界的にも注目を集めている3。
また、アジアの保険会社による不動産投資が認識されていなかった日本でも、2017年3月、アジアの保険会社として初めて、中国の安邦保険集団が大規模な不動産投資を実施した。その規模は約2,600億円にもおよび、賃貸マンション221棟からなる巨大なポートフォリオへの投資であった。安邦保険集団は、非上場企業で情報開示が極めて限定的なため、当レポートのグラフ上に掲載されていないが、非常に不動産投資に積極的である4。今回の日本での不動産投資以前にも、米国での巨額の不動産投資5などが話題を集めてきた。
近年、安邦保険集団のケースのように、中国企業による巨額の海外投資が多数発生している。保険会社の不動産投資に限らず、様々な業種の企業が様々な投資対象への投資を実施している。
しかしながら、今後は当局主導でこれらの海外投資が大幅に抑制される可能性が高まっている。中国政府は、企業の抱えるリスクの拡大や、資金流失による国内金融システムへの影響を懸念し、規制強化の意向を示している。
保険業界でも、今後の市場の監督・管理の見直し、強化が進む方向となっており、保険行政トップの事実上の更迭や、急成長を遂げた安邦保険集団への介入もみられた6。たしかに、不動産投資に限っても、解禁以降のわずか数年間で、海外不動産はもちろん、海外での開発案件にも積極的に投資するほどの進展がみられた。中国の保険会社は不動産投資経験が浅いため、これらの幅広い取り組みに応じた人材の確保、ノウハウの蓄積、リスク管理態勢の整備などに懸念があり、一旦の規制強化はしかるべき措置ともいえよう。
3 増宮 守、「【アジア・新興国】注目を集めるアジアの保険会社による海外不動産投資~中国の保険会社を中心に世界の主要プレイヤーに~」 ニッセイ基礎研究所、保険・年金フォーカス2017/1/31
4 片山ゆき、「【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(19)-安邦保険は、どうして次々と海外事業を買収するのか。」 ニッセイ基礎研究所、保険・年金フォーカス2016/4/19
5 2015年に高級ホテルのウォルドーフ・アストリア・ニューヨークを19.5億米ドルで取得。
6 片山ゆき、「潮目が変わる、中国保険業界-行政トップの事実上更迭、安邦保険グループトップの拘束のその先【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(26)」 ニッセイ基礎研究所、保険・年金フォーカス2017/6/20
6―おわりに
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2017年08月29日「保険・年金フォーカス」)
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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