2017年02月15日

サービス・グローバル企業のアジアにおける事業展開の研究(4):外資とアジア地場の有力小売企業の動向

平賀 富一

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本稿では、世界の大手小売企業のランキング等の情報をベースに、経済発展の中、所得の増加が進み中間層が拡大し、消費や購買力が向上しつつあるアジア市場における欧米日やアジア地場の小売企業の動向とトレンド、さらにアジアの地場企業の実力やプレゼンスの向上の状況などについて述べることとしたい。
 

はじめに

1――世界の10大有力小売企業ランキングにおける概況と変化

図表-1 世界の10大・小売企業の業容・国際展開等の現状・変化
先ず、アジア地域の動向を考察する前提として、世界の有力小売企業の状況を概観しておこう。

デロイトが毎年公表している世界の大手小売企業の調査(Global Power of Retailing)の直近の2017年版(2015年のデータに基づく)によれば、2015年における小売事業の売上高上位10社のランキングは、図表-1のようになっており、米国6社、ドイツ2社(SchwarzとAldi)、フランス(Carrefour)・英国(Tesco)が各1社という顔ぶれとなっている1
次に、同調査の2012年版(2010年データ)、2007年版(2005年データ)も併せて、傾向やトレンドなどを分析・検討すると以下のような点が指摘できる。

・全業種併せた世界企業の売上高ランキングであるFortune Global 500社ランキングのトップ(平賀(2017)参照)であるWal-Mart(ウォルマート:米国)の各年の首位は変わらず、第2位の企業に大差をつけている。その海外事業は増加基調にあり、2015年では29ヶ国で営業し、海外事業売上高比率は25.8%となっている。

・他の米国社は、Amazonを除き、いずれも海外進出国数が10未満であり、その中でCostcoは2015年に約27%の海外売上比率であるが、同社以外のKroger、Walgreen Boots Alliance、Home Depotは、同比率が10%未満と本国である米国での売り上げが大宗を占めている。

・ドイツのディスカウント店であるSchwarzとAldiは、欧州地域を中心とした海外売上比率が6割を超え、世界ランキングも上昇基調にある(ただし両社はアジア地域におけるプレゼンスはない)。

・アジア地域を含め多くの海外諸国の市場への進出に積極的で、かつては世界ランキングの上位の常連であったCarrefour(カルフール:フランス)とTesco(テスコ:英国)は、業績不振のため、本国市場および絞り込んだ海外市場のみに集中する戦略(アジア地域の状況については後述する)に方針変更している。その結果、本ランキングにおいても、図表-2のようにベストテンにおけるポジションが低下している。
図表-2 カルフール・テスコ・アマゾンのランク推移
eCommerce(EC:電子商取引)の世界的な拡大の傾向を代表するAmazon(米国)は、過去5年間に、28位→23位→16位→15位→12位→10位(図表-2)と、そのプレセンスを顕著に高めている2

・図表-1には、参考情報として、本邦の二大小売りグループであるイオンとセブン&アイについて記載した。両社は2015年には、それぞれ14位、20位にランクされている。
 
1 1-4位の企業とその順位は2014年と同じであった。
2 EC分野では、後述のように中国のJD.com(京東商城)が急速に業容を拡大し、2015年の世界ランキングもAmazonに次いで36位に急上昇している。
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平賀 富一

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