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- 日銀短観(9月調査)~全体的に予想の範囲内だが、景況感の先行きは弱い、設備投資計画も慎重
2016年10月03日
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4.売上・収益計画:収益計画は下方修正されたが、まだ下振れリスク大
16年度収益計画(全規模全産業)は、売上高が前年度比0.9%減(前回は0.1%減)、経常利益は8.1%減(前回は7.2%減)とそれぞれ下方修正された。もともと減収減益計画であったが、落ち込みがやや鮮明になった。
売上の内訳では輸出の下方修正が目立つ一方、16年度想定為替レート(大規模製造業)が107.92円と前回(111.41円)からは円高方向に修正されており、円高の織り込みが収益計画の下方修正の大きな要因になったとみられる。
ただし、今回の107.92円(上期108.44円、下期107.42円)という想定為替レートも、足下の実勢よりもかなり円安に留まっている点には留意が必要だ。今後大幅な円安が進まない限り、次回以降の短観において、収益計画がさらに下方修正される可能性が高い。
売上の内訳では輸出の下方修正が目立つ一方、16年度想定為替レート(大規模製造業)が107.92円と前回(111.41円)からは円高方向に修正されており、円高の織り込みが収益計画の下方修正の大きな要因になったとみられる。
ただし、今回の107.92円(上期108.44円、下期107.42円)という想定為替レートも、足下の実勢よりもかなり円安に留まっている点には留意が必要だ。今後大幅な円安が進まない限り、次回以降の短観において、収益計画がさらに下方修正される可能性が高い。
5.設備投資・雇用:16年度設備投資計画は上方修正だが抑制的
生産・営業用設備判断D.I.(「過剰」-「不足」)は全規模全産業で0と、前回から1ポイント低下(需給がタイト化)した。雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)も全規模・全産業で▲19と前回から2ポイント低下している。経済活動が前回から大きく活発化しているわけではないものの、生産面における熊本地震からの回復などが影響したとみられる。
上記の結果、需給ギャップの代理変数とされる「短観加重平均D.I.」(設備・雇用の各D.I. を加重平均して算出)は前回からやや低下している(▲10.3ポイント→▲12.0ポイント)。
D.I.の水準としても引き続き人員の不足感が極めて強い状況が続いている。内訳を見ると、これまで同様、製造業(全規模で▲8)よりも、労働集約型産業が多い非製造業(全規模で▲25)で、人手不足感がより強い。また、企業規模別で見ると、人材調達力や収益力の違いが反映されているとみられるが、中小企業が▲20と大企業の▲12を下回る状況が続いている。この結果、中小企業非製造業では▲20と、中堅企業非製造業と並んで全区分中で最大のマイナス幅(人手不足感)となっている。
人手不足は製造業・非製造業や企業規模を問わず幅広く共有されているが、特に中堅・中小企業非製造業においては深刻な経営課題になっている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断D.I.が現状比2ポイント低下の▲2、雇用判断D.I.は3ポイント低下の▲22と、それぞれ不足感が強まることが見込まれている。両者を反映した「短観加重平均D.I.」も今回に続いて低下に向かう見込み(▲12.0ポイント→▲14.6ポイント)。雇用判断D.I.の低下は特に中小企業で顕著であり、中小企業における人手不足に対する警戒感が現れている(図表9,10)。
上記の結果、需給ギャップの代理変数とされる「短観加重平均D.I.」(設備・雇用の各D.I. を加重平均して算出)は前回からやや低下している(▲10.3ポイント→▲12.0ポイント)。
D.I.の水準としても引き続き人員の不足感が極めて強い状況が続いている。内訳を見ると、これまで同様、製造業(全規模で▲8)よりも、労働集約型産業が多い非製造業(全規模で▲25)で、人手不足感がより強い。また、企業規模別で見ると、人材調達力や収益力の違いが反映されているとみられるが、中小企業が▲20と大企業の▲12を下回る状況が続いている。この結果、中小企業非製造業では▲20と、中堅企業非製造業と並んで全区分中で最大のマイナス幅(人手不足感)となっている。
人手不足は製造業・非製造業や企業規模を問わず幅広く共有されているが、特に中堅・中小企業非製造業においては深刻な経営課題になっている。
先行きの見通し(全規模全産業)は、設備判断D.I.が現状比2ポイント低下の▲2、雇用判断D.I.は3ポイント低下の▲22と、それぞれ不足感が強まることが見込まれている。両者を反映した「短観加重平均D.I.」も今回に続いて低下に向かう見込み(▲12.0ポイント→▲14.6ポイント)。雇用判断D.I.の低下は特に中小企業で顕著であり、中小企業における人手不足に対する警戒感が現れている(図表9,10)。
16年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比1.7%増と前回調査時点の0.4%増から上方修正された。例年、6月調査から9 月調査にかけては、中小企業を中心に計画が固まってくることに伴って上方修正される「統計のクセ」が強く、今回も上方修正となった。
ただし、今回の上方修正幅は1.3%ポイントと、前年度(3.0%ポイント)や一昨年度(2.5%ポイント)と比べて抑制的である。円高によって輸出環境が厳しさを増し、企業収益も既に悪化しているため、一部企業で様子見や先送り姿勢が広がりつつあるとみられる(図表11~12)。
なお、16年度計画(全規模全産業1.7%増)は事前の市場予想(QUICK 集計2.3%増、当社予想は1.9%増)を下回る結果であった。
ただし、今回の上方修正幅は1.3%ポイントと、前年度(3.0%ポイント)や一昨年度(2.5%ポイント)と比べて抑制的である。円高によって輸出環境が厳しさを増し、企業収益も既に悪化しているため、一部企業で様子見や先送り姿勢が広がりつつあるとみられる(図表11~12)。
なお、16年度計画(全規模全産業1.7%増)は事前の市場予想(QUICK 集計2.3%増、当社予想は1.9%増)を下回る結果であった。
(2016年10月03日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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