2016年08月30日

【アジア・新興国】不動産投資家として存在感を増すアジアの保険会社~台湾、韓国に続き、中国本土の保険会社も不動産投資を本格化~

増宮 守

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■要旨

近年、アジアの保険会社による不動産投資の拡大は著しく、以前から積極的な台湾や韓国の保険会社に続き、規制緩和を受けて参入した中国本土の保険会社の動きも活発化している。しかし、2015年の下期以降、世界的に金融市場は動揺し、投資家のリスク意識が高まっている。本稿では、こうしたリスク意識の高まりの中、アジアの保険会社による不動産投資の現状を確認する。

■目次

1―はじめに
2―不動産取引のピークアウト
3―アジアの保険会社による不動産投資の拡大
4―アジア各国の保険市場の成長
5―さらなる不動産投資の積極化
6―おわりに

1―はじめに

1―はじめに

近年、アジアの保険会社による不動産投資の拡大は著しく1、以前から積極的な台湾や韓国の保険会社に続き、規制緩和を受けて参入した中国本土の保険会社の動きも活発化している。しかし、2015年の下期以降、世界的に金融市場は動揺し、投資家のリスク意識が高まっている。本稿では、こうしたリスク意識の高まりの中、アジアの保険会社による不動産投資の現状を確認する。
   

2―不動産取引のピークアウト

2―不動産取引のピークアウト

世界の不動産取引は、景気回復と金融緩和に伴って年々活発化してきたものの、2015年には世界の不動産取引額が6年ぶりに縮小に転じた(図表-1)。中国経済の失速懸念を背景に、アジアパシフィック地域の取引額が大幅に縮小したことが原因となっており、ちなみに同地域では、既に2013年に不動産取引額がピークアウトし、それ以降縮小が続いている。
図表-1 世界の不動産取引額
ただし、アジアパシフィック地域の不動産取引は、開発用地が大半を占めているため(図表-2赤)、必ずしも投資家動向を表していない。なかでも、特に大きいのは中国本土の住宅開発用地の取引額で、急増する中間層の実需拡大期待から膨張した後、景気減速や政府の住宅価格抑制政策などを受けて2013年にピークアウトしていた。

一方、不動産投資家動向を確認するために、賃料収入や売却益目的で取得する収益不動産の取引額をみると(図表-2青)、こちらも既に2014年にピークアウトし、2016年上期には縮小が顕著となっている。やはり、中国経済の失速懸念が高まり、アジア通貨の下落も進む中、投資家はアジアパシフィック地域での不動産投資に慎重になったとみられる。
図表-2 アジアパシフィック地域の不動産取引額
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増宮 守

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