- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 保険 >
- 保険会計・ソルベンシー >
- 英国のPRA(健全性規制機構)による最近の規制対応の動き-ソルベンシーIIへの対応-
2016年07月19日
英国のPRA(健全性規制機構)による最近の規制対応の動き-ソルベンシーIIへの対応-
このレポートの関連カテゴリ
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
■要旨
英国のEU(欧州連合)からの離脱(Brexit)の問題が焦点となっているが、これに関係して、英国の保険監督官庁であるPRA(Prudential Regulation Authority:健全性規制機構)による規制が、今後どのような方向に向かっていくのか、その動向が注目を浴びてくることになる。
今回のレポートでは、2016年からのソルベンシーIIの導入に対応して、技術的準備金に関する経過措置、マッチング調整の適用、内部モデルの変更、内部モデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング及びソルベンシーII開示要素の外部監査に関して、PRAが最近公表している監督当局の考え方を示す「監督上の指針に関するステートメント(Supervisory Statement)」(以下「SS」という)やその前段階としての意見募集を行うコンサルテーション・ペーパー(Consultation Paper)(以下「CP」という)の内容について、概要を紹介する。
■目次
1―はじめに
2―「技術的準備金に関する経過措置」の再計算
1|「技術的準備金に関する経過措置」
(Transitional Measure on Technical Provisions:TMTP)とは
2|SSの概要
3|SSの内容
3―マッチング調整の適用
1|マッチング調整(Matching Adjustment:MA)とは
2|CPの概要
3|CPの提案の概要
4―内部モデルの変更
1|内部モデルとは
2|CPの概要
3|CPの提案の概要
5―内部モデル使用会社に対するモデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング
1|CPの概要
2|CPの背景
3|CPの提案の概要
6―ソルベンシーⅡ開示要素の外部監査
1|CPの概要
2|CPの提案の概要
3|EIOPAの考え方等
7―まとめ
英国のEU(欧州連合)からの離脱(Brexit)の問題が焦点となっているが、これに関係して、英国の保険監督官庁であるPRA(Prudential Regulation Authority:健全性規制機構)による規制が、今後どのような方向に向かっていくのか、その動向が注目を浴びてくることになる。
今回のレポートでは、2016年からのソルベンシーIIの導入に対応して、技術的準備金に関する経過措置、マッチング調整の適用、内部モデルの変更、内部モデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング及びソルベンシーII開示要素の外部監査に関して、PRAが最近公表している監督当局の考え方を示す「監督上の指針に関するステートメント(Supervisory Statement)」(以下「SS」という)やその前段階としての意見募集を行うコンサルテーション・ペーパー(Consultation Paper)(以下「CP」という)の内容について、概要を紹介する。
■目次
1―はじめに
2―「技術的準備金に関する経過措置」の再計算
1|「技術的準備金に関する経過措置」
(Transitional Measure on Technical Provisions:TMTP)とは
2|SSの概要
3|SSの内容
3―マッチング調整の適用
1|マッチング調整(Matching Adjustment:MA)とは
2|CPの概要
3|CPの提案の概要
4―内部モデルの変更
1|内部モデルとは
2|CPの概要
3|CPの提案の概要
5―内部モデル使用会社に対するモデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング
1|CPの概要
2|CPの背景
3|CPの提案の概要
6―ソルベンシーⅡ開示要素の外部監査
1|CPの概要
2|CPの提案の概要
3|EIOPAの考え方等
7―まとめ
1―はじめに
英国のEU(欧州連合)からの離脱(Brexit)の問題が焦点となっているが、これに関係して、英国の保険監督官庁であるPRA(Prudential Regulation Authority:健全性規制機構)による規制が、今後どのような方向に向かっていくのか、その動向が注目を浴びてくることになる。
今回のレポートでは、2016年からのソルベンシーIIの導入に対応して、技術的準備金に関する経過措置、マッチング調整の適用、内部モデルの変更、内部モデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング及びソルベンシーII開示要素の外部監査に関して、PRAが最近公表している監督当局の考え方を示す「監督上の指針に関するステートメント(Supervisory Statement)」(以下「SS」という)やその前段階としての意見募集を行うコンサルテーション・ペーパー(Consultation Paper)(以下「CP」という)の内容について、概要を紹介する。
今回のレポートでは、2016年からのソルベンシーIIの導入に対応して、技術的準備金に関する経過措置、マッチング調整の適用、内部モデルの変更、内部モデルのドリフトと標準式SCR報告のモニタリング及びソルベンシーII開示要素の外部監査に関して、PRAが最近公表している監督当局の考え方を示す「監督上の指針に関するステートメント(Supervisory Statement)」(以下「SS」という)やその前段階としての意見募集を行うコンサルテーション・ペーパー(Consultation Paper)(以下「CP」という)の内容について、概要を紹介する。
2―「技術的準備金に関する経過措置」の再計算
PRAは、4月15日に「ソルベンシーIIの下での『技術的準備金に関する経過措置』の再計算」についてのCPを公表して、関係者の意見を集めていたが、これらのフィードバックを踏まえて、5月25日に最終的なSSを公表した。
1|「技術的準備金に関する経過措置」(Transitional Measure on Technical Provisions:TMTP)とは
2015年までの古いソルベンシーIの基準から、2016年以降の新たなソルベンシーIIの基準への移行については、監督当局の承認を得て、16年の移行期間が認められる。
この経過措置については、①利率そのものを段階的に本来的な水準に収束させる方式、②技術的準備金を段階的に本来的な水準に収束させる方式、の2つの方式が認められている。あくまでも、ソルベンシーII導入前に締結された契約のみが対象になる。
そのイメージとしては、以下の通りとなる。方式②の場合、リスク・マージン部分についての段階的実施を効果的に含むことができる。
1|「技術的準備金に関する経過措置」(Transitional Measure on Technical Provisions:TMTP)とは
2015年までの古いソルベンシーIの基準から、2016年以降の新たなソルベンシーIIの基準への移行については、監督当局の承認を得て、16年の移行期間が認められる。
この経過措置については、①利率そのものを段階的に本来的な水準に収束させる方式、②技術的準備金を段階的に本来的な水準に収束させる方式、の2つの方式が認められている。あくまでも、ソルベンシーII導入前に締結された契約のみが対象になる。
そのイメージとしては、以下の通りとなる。方式②の場合、リスク・マージン部分についての段階的実施を効果的に含むことができる。
英国の殆どの生命保険会社は、ソルベンシーIIへの移行に伴い、レガシー・ポートフォリオに対して保持するために必要とされる資本の増加を回避するために、技術的準備金に関する経過措置(TMTP)を使用することを申請してきた。TMTPは、16年間にわたって、必要資本の急上昇を滑らかにすることになる。
ソルベンシーII指令は、「TMTPの再計算について、2年毎(24ヶ月毎)又は会社のリスク・プロファイルが著しく変化している場合にはより頻繁に行う」こととしている。
2|SSの概要
今回のSSの目的は、TMTPの再計算におけるPRAの期待に関しての透明性とプロセスを提供することにあった。PRAは、4月15日にCPを公表し、これに対するフィードバックを検討することで、最終的なSSとしている。
このSSは、ソルベンシーIIが適用される全ての英国の保険会社とロイズにとって重要であり、TMTPの使用承認を得ている会社や、TMTPを使用することを検討している会社にとって特に関連している。
3|SSの内容
TMTPの再計算は、監督当局又は保険会社のいずれかの要求に応じて行うことができる。
監督当局は、保険会社が経過措置のベネフィットの再計算を支配する内部ポリシーを開発することを要求している。さらに、行動をとることが正当化される状況として、以下の例を挙げている。
(1)事業の処分、(2)再保険プログラムの調整、(3)保険債務のランオフパターンにおける変化、
(4)ボラティリティ調整やマッチング調整の使用、
(5)信用スプレッドの拡大のような事業条件の変更
もし、(A)これらのイベントが会社のソルベンシー比率を5%ポイント以上アップまたはダウンさせるか、(B)リスクフリー曲線の10年時点で50bpの変更があった場合、再計算がなされなければならない。
ソルベンシーII指令は、「TMTPの再計算について、2年毎(24ヶ月毎)又は会社のリスク・プロファイルが著しく変化している場合にはより頻繁に行う」こととしている。
2|SSの概要
今回のSSの目的は、TMTPの再計算におけるPRAの期待に関しての透明性とプロセスを提供することにあった。PRAは、4月15日にCPを公表し、これに対するフィードバックを検討することで、最終的なSSとしている。
このSSは、ソルベンシーIIが適用される全ての英国の保険会社とロイズにとって重要であり、TMTPの使用承認を得ている会社や、TMTPを使用することを検討している会社にとって特に関連している。
3|SSの内容
TMTPの再計算は、監督当局又は保険会社のいずれかの要求に応じて行うことができる。
監督当局は、保険会社が経過措置のベネフィットの再計算を支配する内部ポリシーを開発することを要求している。さらに、行動をとることが正当化される状況として、以下の例を挙げている。
(1)事業の処分、(2)再保険プログラムの調整、(3)保険債務のランオフパターンにおける変化、
(4)ボラティリティ調整やマッチング調整の使用、
(5)信用スプレッドの拡大のような事業条件の変更
もし、(A)これらのイベントが会社のソルベンシー比率を5%ポイント以上アップまたはダウンさせるか、(B)リスクフリー曲線の10年時点で50bpの変更があった場合、再計算がなされなければならない。
3―マッチング調整の適用
PRAは、5月5日に「ソルベンシーII:マッチング調整」についてのCPを公表した。コンサルテーション期間は7月15日までとなっていた。
1|マッチング調整(Matching Adjustment:MA)とは
保険会社は、資産と負債がマッチングしており、区分管理されている等の条件を満たしている場合において、監督当局の承認を得て、リスクフリー・レートに調整を加えることができる。
具体的には、例えば、以下のような条件が求められる。
(1)保険負債のベスト・エスティメイトをカバーするために、債券や同等のキャッシュフロー性質を有する資産からなる資産ポートフォリオが割り当てられ、全保険期間にわたって維持されること
(2)当該資産は、他の資産とは区分して管理されていること
(3)割り当てられた資産からの想定キャッシュフローは、保険負債のキャッシュフローを複製しており、いかなるミスマッチも重要なリスクを生まないこと
(4)保険契約は将来の保険料払込がないこと
等々
2|CPの概要
このCPでは、MAの承認申請及びソルベンシーIIの下でのMAポートフォリオの継続的な管理を含む、技術的準備金の計算目的のためのMAの適用に関連して、会社への期待を設定するSS案を提案している。
3|CPの提案の概要
SS案は、次の分野におけるMAに関して、企業に対するPRAの期待を設定している。
(1)転売市場で購入された年金資産、(2)継続的なMAコンプライアンス
(3)MA要件の違反、(4)MAポートフォリオの変更
このCPは、全ての英国のソルベンシーII対象会社とロイズに関連している。
このCPの提案は、特に、転売市場で購入された年金資産の適格性に関する問題について、MAの承認申請に関連しての会社に対するPRAの期待が含まれている。提案はまた、一旦MAが承認された場合に考察されるべき、継続的なMAコンプライアンスの問題、MA要件の違反の取扱い、MAポートフォリオの変更がある場合に何が起こるのか、のような問題についてのPRAの期待を含んでいる。
1|マッチング調整(Matching Adjustment:MA)とは
保険会社は、資産と負債がマッチングしており、区分管理されている等の条件を満たしている場合において、監督当局の承認を得て、リスクフリー・レートに調整を加えることができる。
具体的には、例えば、以下のような条件が求められる。
(1)保険負債のベスト・エスティメイトをカバーするために、債券や同等のキャッシュフロー性質を有する資産からなる資産ポートフォリオが割り当てられ、全保険期間にわたって維持されること
(2)当該資産は、他の資産とは区分して管理されていること
(3)割り当てられた資産からの想定キャッシュフローは、保険負債のキャッシュフローを複製しており、いかなるミスマッチも重要なリスクを生まないこと
(4)保険契約は将来の保険料払込がないこと
等々
2|CPの概要
このCPでは、MAの承認申請及びソルベンシーIIの下でのMAポートフォリオの継続的な管理を含む、技術的準備金の計算目的のためのMAの適用に関連して、会社への期待を設定するSS案を提案している。
3|CPの提案の概要
SS案は、次の分野におけるMAに関して、企業に対するPRAの期待を設定している。
(1)転売市場で購入された年金資産、(2)継続的なMAコンプライアンス
(3)MA要件の違反、(4)MAポートフォリオの変更
このCPは、全ての英国のソルベンシーII対象会社とロイズに関連している。
このCPの提案は、特に、転売市場で購入された年金資産の適格性に関する問題について、MAの承認申請に関連しての会社に対するPRAの期待が含まれている。提案はまた、一旦MAが承認された場合に考察されるべき、継続的なMAコンプライアンスの問題、MA要件の違反の取扱い、MAポートフォリオの変更がある場合に何が起こるのか、のような問題についてのPRAの期待を含んでいる。
(2016年07月19日「保険・年金フォーカス」)
このレポートの関連カテゴリ
中村 亮一のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/18 | EUがIRRD(保険再建・破綻処理指令)を最終化-業界団体は負担の軽減とルールの明確化等を要求- | 中村 亮一 | 基礎研レポート |
2025/03/10 | ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(2)-2023年結果- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/03/03 | ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2023年結果- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
2025/02/19 | EIOPAがソルベンシーIIのレビューに関する助言のいくつかを提出-欧州委員会からの要請に対する回答- | 中村 亮一 | 保険・年金フォーカス |
新着記事
-
2025年03月21日
勤務間インターバル制度は日本に定着するのか?~労働時間の適正化と「働きたい人が働ける環境」のバランスを考える~ -
2025年03月21日
医療DXの現状 -
2025年03月21日
英国雇用関連統計(25年2月)-給与(中央値)伸び率は5.0%まで低下 -
2025年03月21日
宇宙天気現象に関するリスク-太陽フレアなどのピークに入っている今日この頃 -
2025年03月21日
米国株式、3つの誤算
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【英国のPRA(健全性規制機構)による最近の規制対応の動き-ソルベンシーIIへの対応-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
英国のPRA(健全性規制機構)による最近の規制対応の動き-ソルベンシーIIへの対応-のレポート Topへ