- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 日本経済 >
- 労働関連統計にみられる人口減少と高齢化の影響 ~九州地域の場合~
労働関連統計にみられる人口減少と高齢化の影響 ~九州地域の場合~

日本大学経済学部教授 小巻 泰之
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
都道府県ベースで利用可能な人口及び労働力に関する統計は図表6のとおり、全国ベースに比べると種類は少ない。労働関連の統計は全国ベースであれば労働力調査を中心にその動向を把握することとなるが、都道府県ベースでは標本設計の問題から年次(もしくは四半期)のモデル推計値となっている。ここでは、労働需給を示す失業率と一般職業紹介状況から有効求人倍率を見たうえで、労働関連統計間の関係を相関関係から検討する。
(失業率)
失業率は国勢調査と労働力調査(モデル推計値)が利用可能である。ただし、国勢調査と労働力調査では労働力の定義や従業地・常住地ベースにより異なるため注意を要する。また、都道府県ベースの場合、労働力調査は1997年以降のデータしか利用可能ではない。
失業率及び有効求人倍率はともに労働需給を示す経済統計であるものの、失業率の上昇は労働需給の悪化を示すため、有効求人倍率との関係では負の相関にあることが期待される。
失業率(労働調査ベース)と有効求人倍率の関係(図表9の1行目)をみると、全国ベースでは-0.73と有意な負の相関関係が確認できる。しかし、九州各県の失業率(労働調査ベース)と有効求人倍率との関係は弱い。特に、鹿児島県は-0.39と相関関係は弱い。国勢調査ベースの失業率の場合(図表9の7行目)にはさらに関係は希薄である。相関係数は各県とも逆にプラスとなっており、鹿児島県ではプラスの有意な関係が確認できる。
有効求人倍率の改善が雇用に結びついているのかについて、有効求人倍率と常用雇用(毎月勤労統計地方調査ベース)では、有効求人倍率が労働需給の改善を意味し、全国ベースでは0.64と正の相関関係が確認できる(図表9の4行目)。しかし、九州各県ベースではほとんど無相関に近い状況にある。また、有効求職者と常用雇用についても全国ベースは-0.72と求職者の減少は常用雇用の増加、つまり就業に結びついていることがわかる(図表9の6行目)。しかし、九州各県とも符合こそマイナスであるが関係が弱いことがうかがえる。特に、宮崎県、鹿児島県は無相関といえる。
このことは、有効求人倍率の改善が必ずしも労働需給の改善を意味していない可能性が指摘できる。この点については、内閣府「地域の経済」2015年度版において、有効求人倍率の改善の背景には求職者数の減少の寄与が過去と比べて大きくなっていると指摘している。次節では有効求人倍率の改善の要因分解をおこなう。
(2016年05月13日「基礎研レポート」)
日本大学経済学部教授 小巻 泰之
日本大学経済学部教授 小巻 泰之のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2017/05/09 | 消費税における軽減税率の効果-景気安定化の観点からの検討 | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | 基礎研レポート |
2016/05/13 | 労働関連統計にみられる人口減少と高齢化の影響 ~九州地域の場合~ | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | 基礎研レポート |
2015/07/03 | 消費税増税における「認知ラグ」の影響 | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | ニッセイ基礎研所報 |
2015/04/21 | 高速交通網整備の地域経済への効果~「陸の孤島」島根県西部地域における公共財の整備~ | 日本大学経済学部教授 小巻 泰之 | 基礎研レポート |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【労働関連統計にみられる人口減少と高齢化の影響 ~九州地域の場合~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
労働関連統計にみられる人口減少と高齢化の影響 ~九州地域の場合~のレポート Topへ