- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- アジア経済 >
- 【タイGDP】4-6月期は前年同期比+2.8%~輸出不振と干ばつ被害で景気は踊り場局面に
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
2015年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.8%の増加と、前期の同+3.0%から低下したほか、Bloomberg調査の市場予想(同+2.9%)を小幅に下回った。財貨輸出の停滞によって民間投資が減少し、農家の所得悪化で民間消費が伸び悩んだことが成長率低下の主因となった。タイ経済は景気回復の遅れが度々指摘されてきたが、今回の結果を受けて国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)が通年の成長率見通しを従来の3.0-4.0%から2.7-3.2%に下方修正しており、景気は踊り場局面に入ったと見られる。
景気の牽引役である公共投資と観光業は引き続き好調であった。公共投資は小規模輸送や灌漑整備などの支出が拡大しており、年後半も予算執行が順調に進むなかで拡大傾向が続くと見られる。一方で観光業は、訪タイ外客数が前年比では上昇しているが、昨年の軍事クーデター後の反動増の影響が大きく、今後の景気押上げ効果は縮小するだろう。
民間消費は、燃料価格下落によって中高所得層の購買力が底堅かったものの、全就業者の約3割を占める農家の収入が農産物価格の低迷や干ばつ被害によって伸び悩み、全体として弱含んでいる。今後はコメ不足によって農産物価格は上向くだろうが、干ばつの長期化で農家の購買力が回復する見込みは薄く、消費の回復は遅れそうだ。
財貨輸出は中国・ASEANなど主要輸出先の景気減速を受けて減少している。3月と4月の利下げは一定程度バーツ安(実効為替レート)をもたらしたが、経常黒字が常態化しており、周辺国に比してバーツ高圧力が掛かりやすい構造は変わらない。
輸出主導経済のタイにとって輸出不振の長期化は企業の設備投資や雇用・所得環境の悪化を通じて内需の重石となる上、今後は政情不安による景気停滞局面からの反動の影響が一巡するため、景気のトレンドは下向きやすい。政府は追加の景気刺激策を検討しているほか、これに合わせて中央銀行が追加利下げに踏み切る可能性もあり、更なる景気減速を回避できるかに注目したい。
(2015年08月17日「経済・金融フラッシュ」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1780
- 【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職
斉藤 誠のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/03/13 | インド消費者物価(25年2月)~2月のCPI上昇率は半年ぶりの4%割れ | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/03/06 | インド経済の見通し~農村部の回復と所得減税により民間消費が景気をけん引、当面は+6%台後半の成長持続 | 斉藤 誠 | Weekly エコノミスト・レター |
2025/02/17 | タイ経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比3.2%増~純輸出と政府支出が拡大、2期連続で+3%台の成長に | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
2025/02/14 | マレーシア経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比+5.0%~内需が好調で堅調な成長ペースを維持 | 斉藤 誠 | 経済・金融フラッシュ |
新着記事
-
2025年03月14日
噴火による降灰への対策-雪とはまた違う対応 -
2025年03月14日
ロシアの物価状況(25年2月)-前年比で上昇が続き10%超に -
2025年03月14日
株式インデックス投資において割高・割安は気にするべきか-長期投資における判断基準について考える -
2025年03月13日
インド消費者物価(25年2月)~2月のCPI上昇率は半年ぶりの4%割れ -
2025年03月13日
行き先を探す“核の荷物”~高レベル放射性廃棄物の最終処分とエネルギー政策~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【【タイGDP】4-6月期は前年同期比+2.8%~輸出不振と干ばつ被害で景気は踊り場局面に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
【タイGDP】4-6月期は前年同期比+2.8%~輸出不振と干ばつ被害で景気は踊り場局面にのレポート Topへ