2015年08月17日

【タイGDP】4-6月期は前年同期比+2.8%~輸出不振と干ばつ被害で景気は踊り場局面に

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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2015年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+2.8%の増加と、前期の同+3.0%から低下したほか、Bloomberg調査の市場予想(同+2.9%)を小幅に下回った。財貨輸出の停滞によって民間投資が減少し、農家の所得悪化で民間消費が伸び悩んだことが成長率低下の主因となった。タイ経済は景気回復の遅れが度々指摘されてきたが、今回の結果を受けて国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)が通年の成長率見通しを従来の3.0-4.0%から2.7-3.2%に下方修正しており、景気は踊り場局面に入ったと見られる。

景気の牽引役である公共投資と観光業は引き続き好調であった。公共投資は小規模輸送や灌漑整備などの支出が拡大しており、年後半も予算執行が順調に進むなかで拡大傾向が続くと見られる。一方で観光業は、訪タイ外客数が前年比では上昇しているが、昨年の軍事クーデター後の反動増の影響が大きく、今後の景気押上げ効果は縮小するだろう。

民間消費は、燃料価格下落によって中高所得層の購買力が底堅かったものの、全就業者の約3割を占める農家の収入が農産物価格の低迷や干ばつ被害によって伸び悩み、全体として弱含んでいる。今後はコメ不足によって農産物価格は上向くだろうが、干ばつの長期化で農家の購買力が回復する見込みは薄く、消費の回復は遅れそうだ。

財貨輸出は中国・ASEANなど主要輸出先の景気減速を受けて減少している。3月と4月の利下げは一定程度バーツ安(実効為替レート)をもたらしたが、経常黒字が常態化しており、周辺国に比してバーツ高圧力が掛かりやすい構造は変わらない。

輸出主導経済のタイにとって輸出不振の長期化は企業の設備投資や雇用・所得環境の悪化を通じて内需の重石となる上、今後は政情不安による景気停滞局面からの反動の影響が一巡するため、景気のトレンドは下向きやすい。政府は追加の景気刺激策を検討しているほか、これに合わせて中央銀行が追加利下げに踏み切る可能性もあり、更なる景気減速を回避できるかに注目したい。


タイの実質GDP成長率(需要側)/タイの外国人観光客数

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2015年08月17日「経済・金融フラッシュ」)

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