2014年12月01日

【インドGDP】7-9月期は前年同期比+5.3%~高金利を背景に投資が鈍化~

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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1.7-9月期は前年同期比+5.3%

インド中央統計機構(CSO)は11月28日に2014年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率(供給側 )は前年同期比+5.3%の増加と、前期(同+5.7%)から減速したものの、市場予測(Bloomberg集計値:同+5.0%)を上回った。

インドの実質GDP成長率(供給側)/インドの実質GDP成長率(支出側)


2.利下げで投資を加速できるか

7-9月期の成長率は4-6月期より減速したものの、過去2年の4%台の停滞期と比べれば水準は高く、回復トレンドが腰折れたわけではないようだ。7-9月期の投資は前期比で見れば横ばいと企業の投資意欲が失われたとまでは言えないだろう。インドは引き続き政府による改革の進展に伴って、海外からの直接投資が拡大を続けることで、景気は温度を上げていくと見ている。
過去2年の低成長の要因であった高インフレは収まりつつある。消費者物価指数の低下(10月時点で前年同月比5.5%)が家計の購買力を増加させ、消費は7-9月期も堅調だった。ただし、今後インフレ率が再び上昇する可能性には注意が必要だ。インドはインフラ未整備や小売体制の組織化の未成熟等、供給面が構造的な高コスト体質であること、またモンスーン期の雨不足の影響や米国の早期利上げ観測によるルピー安を通じた輸入インフレに対する懸念は燻る。
消費が堅調であるのに対し、投資は高金利を背景に勢いを加速できずにいる。政府は投資呼び込もうと利下げを望むが、中央銀行は慎重姿勢を崩していない。足元のインフレ率は16年1月のインフレ目標を下回っているほか、軽油の価格統制撤廃も通貨ルピーの安定化に寄与している。しかし、先行きのインフレ懸念は払拭された訳ではない上、足元の貿易赤字の拡大傾向も利下げの足枷になっている。中央銀行が利下げを受け入れやすくするためにも、財政再建や経常収支の改善に向けた政府の改革を更に進展させることは必要だろう。政府が中央銀行と歩調を揃えることができなければ、インドへの投資を促す言葉「Make in India」は掛け声倒れになりかねない。

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

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