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- 若年人口の減少と大都市中心部への人口集中
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今年5月に日本創成会議が衝撃的な提言を公表した。そこでは2040年までに49.8%の市町村で20~39 歳の女性数が5 割以上減ると推計し、「このままでは、多くの地域は将来消滅するおそれがある」と警告している。自治体別に若年女性数の減少率を明記したことも反響を呼んだ理由のようだ。
人口減少は住宅などの不動産分野にも直接的な影響を与えている。住宅着工戸数が1996年の164万戸から2013年は98万戸となったのも一次取得層の人口減少の影響が大きいと考えられる。2010年の人口ピラミッドをみると、団塊ジュニア世代のピーク(2010年に37歳)の人口は202万人だが、17歳は120万人、2013年の出生数は103 万人と、団塊ジュニア世代のピークから半減している[図表1]。
日本創成会議の提言では、地方の人口減少の最大の要因は、若者の東京圏など大都市への流出だと指摘している。確かに、合計特殊出生率が1.13と全国で最低の東京都で人口増加が見られるのは、地方からの流入によるためだ。リーマンショック後に弱まっていた地方から東京圏や大都市への人口流入は、東日本大震災後に増加し、再び集中傾向が強まった[図表2]。
人口流入の大都市への集中も顕著だ。2010年から2013年にかけて転入超過数は、東京都区部では1.9倍、大阪市では1.5倍に増加した。
大都市での転入超過数の増加は、短期的には東日本大震災を契機とする転入者数の増加が大きく寄与しているが、長期的には大都市からの転出者数の減少による効果が大きい。大都市への人口移動はかつて、高校や大学卒業時に地方から大都市に転居し、20代後半以降に、地元へのUターンなどを理由に大都市から転出するのが一般的であった。しかし近年では、20代後半以降の大都市からの転出が減少し、転入が超過する状況となっている。
各都市の中心部は、大都市でも特に転入超過が顕著に見られる地区である。東京都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)に居住する人口は都区部全体の10.7%を占めるが、都区部の2013年の総転入超過数に占める都心5区の比率は23.3%であった。こうした人口移動の都市中心部への集中は、他の主要都市でも同様に見られる[図表3]。東京を含めた主要都市の中心部では、オフィス需要よりもマンション需要が拡大するとの見通しなどによるマンション開発の進展も転入超過数の増加を押し進めてきた。
大都市中心部への人口流入の増加は、都心部の人口を大きく増加させている。例えば、東京都中央区では2014年の人口が132,610人だったが、これは最近の最少値(1997年)の1.8倍にあたる。同様に世帯数は76,455世帯で1994年の2.3倍となっている[図表4]。
現在、東京湾岸地域では2020年に向けて約3万戸といわれる大量のマンション開発が進められている。都区部の分譲マンション供給戸数は2012年に1万9千戸、2013年に2万8千戸であり、湾岸部での大量供給は都区部の居住人口や住宅市場にも大きな影響があるだろう。現在、建設費が大幅に上昇し、販売価格の高騰や開発計画の延期などが懸念材料ではあるが、都市のコンパクト化・都心居住の進展の中で、今後も大都市中心部への人口移動と住宅需要の増加は続くと考えられる。
(2014年10月07日「基礎研マンスリー」)
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