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祝日歓迎論~スポーツを通じて中高齢者をもっと元気に~

取締役 前田 俊之
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7月21日は海の日。毎年多くの地域では梅雨明けの時期と重なることもあり、祝日としては絶好のタイミングだ。このような季節柄ゆえに、毎年この日には海にちなんだイベントが各地で開かれている。今年はそんなイベントのひとつに参加してみた。
足を運んだのは湘南カヌーレース。葉山と江ノ島の間をカヌー(厳密にはシーカヤック)で往復する約13kmのレースだ。当日の飛び込み参加もOKという気安さが売り物のイベントである。当日、集まったカヌーは約50艇。これだけの数になると見た目にもにぎやかだ。ご存知の方も多いと思うが、カヌーやカヤックは人の漕ぐ力だけが頼り。まさにエコ重視の時代にマッチした乗り物である。
朝10時45分。うす曇り空の下、合図とともに色とりどりのカヌーが一斉に動き出す。スタート直後こそ団子状態だが、距離を行くに従って集団は長く伸びてゆく。ちょうどマラソンと同じような展開だ。葉山から江ノ島に向う往路の途中では、右手に材木座、由比ガ浜などの海岸が続く。砂浜には数多くの海の家が並び、すでに海水浴客で賑わっている様子がうかがえる。
さらに進むとその先には稲村ケ崎、そして七里ヶ浜が広がっている。その名の通り長い砂浜が続く。このあたりはサーファーのメッカとなっていることで有名だ。多くのサーファーを魅了する波は複雑な動きをするので、しばらくの間は安全第一のスローペースで進む。それでも砂浜の向こうに見える渋滞中の国道を往く車といい勝負だ。
スタートしてから約50分後、ようやく江ノ島沖の中間点にたどり着く。出発した50艇の半数が既に折り返している。同じ姿勢で漕ぎ続けたからだろうか、腰に痛みを感じるのでここでひと休み。凍らせたペットボトルのスポーツ飲料がちょうど飲み頃になっている。一息ついて身体をほぐすと流れていた汗も少しおさまってきた。ここから先は来た海路を戻るだけと再び気合を入れ直す。
時計が12時半近くを示す頃、ゴール地点の目印である赤い灯台がようやく見えてきた。ここまで来れば後は気力を振り絞るのみ。スタートしてから2時間弱、ようやく灯台の脇のゴールを抜けて近くの港に着艇する。既にゴールした参加者が思い思いの格好で疲れを癒している。しかし、体の疲れとは裏腹に、一人ひとりの顔には達成感が漂う。スポーツの後の一番すがすがしい瞬間だ。
今回のイベントの主催者によれば、同時に開催する江ノ島からのスタート組も含めると、多い年には100艇近くが参加するという。その中には筆者も含め、数多くの50代、60代の参加者が含まれているそうで、その世代の参加数も年々増えているという。ゴール地点での陽に焼けた横顔は、よくよく見れば筆者と同世代と思しき風貌、なかには団塊世代と思しき参加者も少なくなかった。ちなみにレース仕様艇クラスの優勝は20代男性だが、一般クラスで優勝したのは60代の男性であった。
さて、最近になって8月11日が山の日と決まった。筆者はこれまで新たに祝日を設けることに関心を持っていなかった。と言うより、どちらかと言えば不要論に近い考えを持っていた。やたら祝日を設けることに少なからず抵抗感があったのである。しかし、今回の海の日のイベントに参加して、今までとは違う考えを持つようになった。
これから団塊の世代を中心に高齢者の数が一段と増えることが予想されている。それに伴い懸念されているのが医療費の急増だ。今からおよそ10年後には社会保障関連費用のうち医療関係の給付額が年金関係の給付額を上回る見通しになっている。
こうした医療費の増加ペースを抑えるために重要な役割を果たすと期待されているのが高齢者の健康増進である。ある研究機関のデータ i によれば、日常ローイング(ボード漕ぎ)運動を行っている高齢者と運動習慣のない高齢者では、大腰筋の大きさに50%の開きがあるという。大腰筋が高齢者の歩行能力維持や転倒防止に重要な役割を果たすことは良く知られている。また、登山やジョギングなどに様々な健康効果があることも疑いの余地はない。高齢者がスポーツや運動に親しむ機会を増やすきっかけになると考えれば、これから更に増える祝日も決して悪い話ではない。
2016年から始まる「山の日」。皆さんなら8月11日は何をしますか?
http://www.waseda.jp/sports/supoken/research/2008_2/5007A001_abs.pdf
(2014年07月22日「研究員の眼」)
取締役
前田 俊之 (まえだ としゆき)
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