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- 2014~2016年度経済見通し
1―駆け込み需要は前回の増税前に匹敵する大きさに
2014年1-3月期の実質GDPは前期比1.6%(年率6.7%)の高成長となった。外需は引き続き成長率を押し下げたが、消費税率引き上げ前の駆け込み需要を主因として民間消費が前期比2.2%と急増したこと、好調な企業業績を背景に設備投資が前期比7.6%と伸びを大きく高めたことなどから、国内民間需要が経済成長の牽引役となった。この結果、2013年度の実質GDP成長率は2.3%、名目GDP成長率は1.9%となった。
2013年度の駆け込み需要は個人消費で2.4兆円(2005年基準、以下同じ)、住宅投資で1.0兆円、合計で3.3兆円、GDP比では0.6%と試算され、前回(1997年度)の増税前と同程度の大きさになったとみられる。
◎―景気の基調が見極めにくい状態が続く
消費税率が5%から8%に引上げられてから3ヵ月が経過し、駆け込み需要の反動減が経済指標から確認できるようになってきた。ただし、足もとは駆け込み需要の反動減と物価上昇に伴う実質所得低下の影響が重なっているため、景気の基調が読みにくくなっている。
このことを図表1のような概念図を用いて説明すると以下のようになる。現時点で判明しているのはB地点までの実績値とC地点の部分的な情報である。反動減の影響が一巡するD地点までの実績値が確認できれば、景気の基調はかなりはっきりする。しかし、四半期ベースのGDP統計でD地点に相当するのは2014年7-9月期で、当期の実績値が公表されるのは2014年11月中旬とかなり先のこととなる。当面は景気の基調が見極めにくい状態が続くことになるだろう。
2―実質成長率は2014年度0.5%、2015年度1.1%、2016年度1.3%を予想
◎―消費増税後も景気の回復基調は維持
2014年度に入ると、駆け込み需要の反動を主因として成長率はいったん大きく落ち込む可能性が高い。2014年4-6月期は個人消費、住宅投資の減少を主因として前期比年率▲5.6%の大幅マイナス成長となるだろう。
買い替えサイクルが長い住宅投資の反動はしばらく続く可能性が高いが、個人消費の反動減は比較的短期間で終了することが見込まれる。2014年7-9月期は反動減の影響が薄れていくにしたがい個人消費が増加に転じることなどからプラス成長に復帰し、景気の回復基調は維持されるだろう。また、2013年度は成長率に対してマイナス寄与となる外需は、輸出の伸びが引き続き緩やかにとどまるものの、国内需要の減速を背景に輸入の伸びが低下することから、2014年度は成長率の押し上げ要因となることが見込まれる。
実質GDP成長率は2014年度が0.5%、2015年度が1.1%、2016年度が1.3%と予想する(図表2)。2014年度は消費税率引き上げによる物価上昇に伴う実質所得の低下と駆け込み需要の反動減が重なるため2013年度から成長率が大きく低下することは避けられないだろう。
今回の見通しでは、消費税率が2015年10月に8%から10%へ引上げられることを前提としている。2014年度は3%の引き上げ分がフルに影響することになるが、次回の引き上げは2015年度下期からとなるため、年度ベースでは2015年度、2016年度ともに1%分の引き上げの影響を受けることになる。また、次回の増税前後にも今回と同様に駆け込み需要とその反動減が発生することが見込まれるが、駆け込み需要と反動減の影響が2015年度内でほぼ相殺されるため、2014年度に比べると消費税率引き上げの影響は小さくなる。このため、2015年度、2016年度の成長率は潜在成長率を上回る伸びを確保できるだろう。
◎―物価の見通し
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2013年12月から2014年3月まで前年比1.3%の伸びを続けた後、消費税率が引き上げられた4月には上昇率が1.9%ポイント拡大し、前年比3.2%となった。
消費者物価指数に占める非課税品目の割合が約3割、経過措置で新税率の適用が5月以降となる品目 が約1割(いずれも生鮮食品を除く総合に対する割合)であるため、4月に消費税率引き上げの影響を受ける品目の割合は6割弱となる。この点を考慮すると、消費税率引き上げにより4月のコアCPI上昇率は1.7%ポイント押し上げられる計算となるが、実際の上昇率の拡大幅はこれを若干上回った。
4月からの課税品目について品目別の価格転嫁率を確認すると、前回の増税時(97年4月)は価格転嫁率が100%を上回る品目は5割弱にとどまっていたが今回は約6割の品目が100%を上回る転嫁率となった(図表3)。
2013年度末にかけて駆け込み需要の影響もあって景気が国内需要を中心に好調であったことに加え、今回の増税に際しては、政府が消費税の転嫁拒否や消費税分を値引きする等の宣伝・広告を禁止するなど、円滑な価格転嫁を促進する姿勢を明確に示していたことが企業の値上げを後押ししたとみられる。こうしたことから企業の値上げに対する抵抗感は小さくなり、これまで十分に転嫁できていなかった円安によるコスト増を、この機会に消費増税分に上乗せする形で製品、サービス価格に反映させた企業も多かったものと考えられる。
コアCPIは、夏頃までは前年比で3%台半ばの伸びが続く可能性が高い。ただし、消費税率引き上げに伴う景気減速によって需給バランスが悪化すること、円安効果の一巡から輸入物価の伸びが低下することなどから、その後は伸び率が徐々に鈍化し、年末にかけては2%台後半(消費税率引き上げの影響を除くと0%台後半)の伸びになると予想する。
一方、物価上昇がある程度定着してきたこと、消費税率引き上げ分の価格転嫁も比較的スムーズに行われたこともあり、予想物価上昇率も一定程度高まっていると考えられる。リーマン・ショックのような外部環境の急速な悪化がなければ、物価上昇率が再びマイナス圏に陥るリスクは低いだろう。2014年度は潜在成長率を若干下回る成長にとどまるが、2015年度、2016年度と消費増税の影響を受けながらも潜在成長率を超える成長となるため、需給バランスは改善を続ける。また、景気回復が2016年度末まで続いた場合には、2012年11月を底とした景気拡張期間は4年を超えることになるため、賃金が持続的に上昇し、このことがサービス価格の安定的な上昇につながる効果も期待できる。
コアCPI上昇率は2014年度が前年比2.9%(0.9%)、2015年度が同1.5%(0.8%)、2016年度が同1.8%(1.1%)と予想する(括弧内は消費税率引き上げの影響を除くベース)。今回の予測期間中に2%の「物価安定の目標」を達成することは難しいが、物価上昇がこれまでのエネルギーを中心としたものから、エネルギー以外の財やサービスにまで広がっていけば、デフレ脱却はより確実なものとなるだろう。
(2014年07月07日「基礎研マンスリー」)
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- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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