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- 【6月米FOMC】大きなサプライズはないが、イエレン議長の発言には注目材料も
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【要旨】
金融政策の概要
米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が6月17-18日(現地時間)に開催され、資産購入ペースの縮小(100億ドル/月の減額)が決定された。資産購入額の減額は事前の市場予想の通りだった。声明文では、景気の現状判断が変更されたが、それ以外の経済見通しやフォワードガイダンスについては変更されなかった。なお、景気の現状判断に関しては上方修正されたものが多かった。
記者会見でも大きなサプライズはなかった。しかし、FOMC参加者の見通しのうち、長期における適正な政策金利の水準が低下しており、イエレン議長が、この理由として長期の成長率水準の低下に言及したことは注目と言えるだろう(声明・記者会見・FOMC参加者の経済見通しの詳細はPDFを参照)。
金融政策の評価
FOMCで決定された金融政策におけるテーパリングの継続は事前の予想通りであり、声明文もほとんど変更されなかった。今回は記者会見が設定されており、イエレン議長の発言にも注目が集まったが、こちらにも大きなサプライズはなく、無難に消化されたと言える。
ただし、サプライズには至らなかったがイエレン議長の発言には注目点がいくつかあった。
まず、FOMC参加者の長期における適正な政策金利の水準が中央値、最頻値ともに3月時点の4.0%から3.75%に0.25%ポイント低下した。記者会見でもこの点について質問があり、イエレン議長はアンケートに回答するFOMC参加者が交代になったほか、「最も適当な理由」として長期の成長率見通しが引き下げられたということに言及している。
確かに、アンケート結果では長期における政策金利の適正水準を4.0%と回答する者が8名から3名に減少、3.75%は2名から7名に増加しており、これはFOMC参加者の交代(2名脱退、2名加入)だけでは説明がつかない。つまり、数名の参加者は政策金利の適正水準を引き下げたものと見られる。
ただし、成長率見通しのアンケート結果は、中心傾向で「2.2-2.3%」から「2.1-2.3%」と下限が0.1%下方に修正されたに過ぎず、見通しを引き下げたと断言する材料としては弱いように感じる。成長率見通しの正確な分布は不明だが、イエレン議長の発言を聞く限り、相応の根拠を持って指摘していると見られることから、イエレン議長自身が長期の成長率見通しや政策金利の適正水準を引き下げ、自身の見解を述べたか、FOMCにおいてこの点(政策金利の適正水準や長期の成長率見通し)に関する議論が交わされた可能性がある。そのため、今後に公表される議事録は注目と言えるだろう。
記者会見でも、長期の成長率見通し(≒潜在成長率)の低下要因について言及しており、そこでは資本ストックの蓄積が進まないほか、労働市場の回復が遅いことを原因として挙げている。とりわけ労働市場については履歴効果(長期間の失業自体が、就職しにくくさせてしまうこと)に触れ、これが構造要因となり得ることを指摘している。FOMCでこれらの点に関する議論がされている可能性が考えられる。
また、2011年に合意された出口戦略の修正版を今年後半に示すとした点も注目と言える。利上げの時期、償還分の再投資の停止時期、バランスシートの正常化に有する時間などのスケジュールや、これらを実行するにあたっての手段に注目が集まっている。修正版の公表は市場との対話を重視するならば記者会見が設定されている9月FOMCあるいは12月FOMCだが、9月はテーパリングの途中であることから、12月の可能性がやや高いと見られる。
(2014年06月19日「経済・金融フラッシュ」)
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- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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