2014年05月20日

米国と中国、経済的影響力が大きいのは?

三尾 幸吉郎

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■要旨

1―モノの貿易では米中逆転

昨2013年、中国のモノの貿易総額が米国を抜き世界一となった。G20諸国の輸出先を見ると、中国向けのシェアは10年前と比べてアルゼンチンを除く全ての国で上昇しており、特にオーストラリアでは36.1%、南アフリカでは32.0%、韓国では26.1%、ブラジルでは19.0%と米国向けを大きく上回ってきており、中国の経済的影響力は徐々に増しつつある。


2―米国の経済的影響力は依然大きい

しかし、(1)中国ではモノの貿易の3分の1が加工貿易で、最終消費地は米国である場合も多く、付加価値ベースで見ると中国向けは見かけほど大きくないこと、(2)サービス貿易では中国は米国の半分程度に留まり、特に特許権使用料及び使用許諾料や金融では米国に遠く及ばないこと、(3)株価相関の上でも中国株との連動性はまだ低く世界の株価に与える影響は米国株の方が大きいことなどから、米国の経済的影響力は中国を上回ると思われる。


3―世界経済への影響力が米中逆転する日はくるのか?

中国が取り組んでいる構造改革が進展すれば、中国は生産拠点から最終消費地に脱皮し、モノに加えてサービスの貿易も増えて、株価相関の上でも中国株との連動性が高まって、中国の経済的影響力が米国を上回る可能性もあるだろう。しかし、“社会主義市場経済”を標榜する中国にとっては、資本主義国よりも構造改革を進める上でのハードルが高く、習近平政権がよほど強いリーダーシップで推進しなければ構造改革は進まないだろう。

米国と中国の世界経済への影響力の変化は、国際政治におけるバランス・オブ・パワーにも影響するだけに、米中両国と日本以外の国との経済関係をできる限り多角的に押さえておく必要がありそうだ。

(2014年05月20日「基礎研レター」)

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