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日本のテレビ放送は今年の2月1日で60歳の誕生日を迎えた。人にたとえれば還暦である。私も今年還暦を迎えたが、昨今、加齢にともなう気力、体力、知力の衰えを痛切に感じている。テレビ業界も、近年、若者を中心とした視聴離れや総世帯視聴率の低下とそれに伴う広告収入の減少に頭を悩ませていた。しかし、お茶の間の“王様”の地位が揺らぎつつあったテレビは、今年2つのドラマが大ヒットし、ドラマの中で使われたセリフが2つとも流行語大賞に選ばれるなどの社会現象を生んだことで、メディアとしての力を改めて示すとともに、失いかけていた自信を取り戻しつつあるようだ。
今、テレビ業界は、未来に向けてネットの活用や連動を盛んに模索している。民放各社は、来年の1月から3月にネットと連動したテレビ番組を実験的に放送する。スマホなどで通販商品の価格を投票で決めたり、画面に映るキャラクターを操作できたりするという。テレビ世代の私としては、あらゆる世代の大勢の視聴者に、同時かつ瞬時に、わかり易く情報を届けることができるというテレビの「強み」を、徹底的に追求して欲しいと思うのだが、テレビ離れが進むスマホ世代を呼び戻すためには、ネットの活用や連動によって付加価値を高めることも必要不可欠なことなのかも知れない。
ネットの活用や連動を行う場合、放送の「公平性」や「中立性」が損なわれないよう、周到な検討と万全の対策が必須である。具体的には、通販商品の価格投票における意図的な価格の操作や報道番組等の意見募集における意図的な民意の操作を如何に排除するかといったことである。テレビ業界では、過去にやらせ事件や偏向報道事件といった視聴者の信頼を裏切る事件が起こっている。業界自身がこのような事件を繰り返すことは論外だが、ネットの活用や連動にあたって、「やらせ」や「偏向」を惹き起こして放送の「公平性」や「中立性」を損なうことがあってはならない。
全国視聴率1%が100万人の視聴にあたることを考えれば、ネットと比較してもテレビはまだまだメディアとしての強大な影響力を保持している。テレビ業界が取り戻しつつある自信を確信に変えて、ネットの活用や連動等のさまざまな取り組みに果敢にチャレンジしていくことを是非とも期待したい。そして、そのチャレンジがテレビの未来を切り拓くことに繋がっていくことを切に願っている。
これまでの60年のテレビの歩みを番組にたとえて「テレビの時代(第一話)」とするならば、来年から始まる第二話が、ネットの活用や連動という新たなエピソードが加わることによって、大ヒットした第一話と同様に数多くの視聴者を獲得することをテレビ世代のひとりとして大いに期待している。
(2013年12月24日「研究員の眼」)
山田 善志夫
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