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- 若者をいかにして農業に呼び込むのか -待ったなし、農業の担い手育成!-
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現在、アベノミクスの成長戦略やTPP交渉の進捗に因んで、農業問題への関心が急速に高まってきています。しかしながら、農業の重要性については十分認識しているが、今ひとつ、どうあるべきかについての確信が持てないという方も多いのではないでしょうか。
これは、農業従事者の減少に伴い、実際に農業をされている方との関わりが著しく減少し、多くの人々にとって、農業がリアルでなくなってしまったという現実に起因するのだと思います。
農業従事者は激減しています。戦後すぐの頃には、第一次産業従事者が、全就業者のほぼ半数近くを占めていたのですが、今や全就業者の4%を占めるのみです(図1)。そのうち、農業従事者は、林業・漁業従事者を除いた3.6%にしか過ぎません。
さて、少ない人数で農業が担えているという現状は、機械化を始めとした農業生産性の向上の賜物であると肯定的に捉えることもできるでしょう。しかしながら、この状況が今後も継続可能なのかという、サステナビリティの観点から考える時、現状には致命的な大問題があります。それは、現在の農業は誰に担われているのかという問題です。
実は、現在の農業従事者の年齢構成は、著しく高齢者に偏ったものになっています。40歳未満の若者の割合は4.9%、40・50歳代の中堅世代の割合も18.5%にしか過ぎません(図2)。この、若者や中堅世代の農業従事者が極端に少ないという現状が、我々から農業従事者の知己を持つことをさらに遠ざけ、益々、農業の現状や課題についてのリアルな想起を困難にしているのです。
一方、76.5%を占める60歳以上の人々(60~74歳47.8%、75歳以上28.7%)は、いくら保護政策を積み重ねても、早晩加齢とともに農業の担い手から卒業されていきます。この76.5%の役割を、誰が替わりに担うのか。それは、若い世代しかいないのです。今後、若者や中堅世代が、新規に・大量に・急速に、就農・定着していかなければ、76.5%の役割を担うことはできません。
幸い、平成22年度の『食料・農業・農村白書』には、フランスにおける成功事例の記述があります。フランスでは、手厚い就農交付金・低金利農業融資制度等の、一連の若者の新規就農促進政策の実施により、就農者の若返りに見事成功し、農業従事者に占める若者(40歳未満)の割合を、15%(1970年)から29%(2003年)まで倍増させて、農業の生産性・持続性を著しく高めたとのことです。
減反、企業参入の是非など、日本の農業の将来を左右する政策が議論されていますが、『若者をいかにして農業に呼び込むのか』という視点を、すべての議論の前提として持つべきであると思います。
(2013年12月09日「研究員の眼」)
中村 昭
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