コラム
2013年03月01日

人口の増加がもたらす街の活気 -都市中心部の人口空洞化と人口増から

竹内 一雅

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現在、東京で最も人口増加率の高い市区はどこかご存知でしょうか。それは、東京駅のすぐ東側、日本橋や銀座、築地中央卸売市場、もんじゃ焼きで有名な月島などが立地する中央区です。2000年以降、東京都区部の人口増加率では圧倒的な1位。最近では人口増加数もベスト5に入っています。

かつて、中央区では人口減少の深刻化により、人口の空洞化やコミュニティの危機が叫ばれました。1960年代から70年代には10年間の人口減少率が約25%と、10年ごとに人口の1/4が減少していたのです。それが1997年を底に人口増加に転じました。2012年までの15年間に人口は1.7倍に急増し、高度成長期の1960年代末の人口規模を回復しました。

1990年代半ばに銀座以外の中央区内を、特に土曜日や日曜日に歩くと、その人通りの少なさに驚いたものです。それが、いまはマンションが立つ通り沿いにはこどもの声が響き、公園やスーパーマーケット、レストランなどでは若いカップルや幼児を連れた親子連れを多く見るようになりました。特に、中央区晴海から橋を渡った先にある、ららぽーと豊洲(江東区)ではこども連れの多さに驚かされます。多くのこどもたちが遊び、元気に声をあげる姿は、たまたま通りかかったわたしにも元気を与えてくれます。20代後半から40代の家族世帯の人口増加により、中央区の0歳から4歳のこどもの数は1997年の2千人強から6千人へと増加し、高齢化率は16.4%と都区部で最低となりました。

日本の人口は2005年頃から一進一退を続けてきましたが、2011年より毎年の減少が10万人を上回り、本格的な減少期に入ったと思われます。ほとんどの道府県で人口の減少が続き、過疎地域面積は全国土の57%、過疎地域の市町村数は全体の45%に及んでいます。震災前の推計ですが、2050年までに日本の人口は約25%減少し、人口が半分以下になる地点は現在の居住地域の66%に達する一方、増加地点は2%に満たず、増加は東京圏などに集中すると予測されています。

こどもの存在は周囲に明るさを与えてくれます。若者の存在は刺激を与えてくれます。人口の増加は街に活気とにぎわいを、経済には成長と競争力を与えてくれます。都市の中心部ではそのような街が再生され、育ちはじめています。今後、都市中心部を核にさらなる出生率の拡大と人口増加の動きを加速し、それを全国に広げる仕組みの構築に期待したいと思います

日本の多くの場所が再び、こどもであふれ、若者が夢を語り、人々が生き生きと遊び、働き、高齢者が幸せにすごし、他のアジア諸国に負けない活気にあふれている、そんな姿を想像してみてください。人口の増加はそうしたにぎわいと活気を生み出すのではないでしょうか。わたしは、そんな日本に住みたいと願っているのですが。みなさんはどうですか?


 
  今年、団塊ジュニア世代のピークが40歳となります。女性の年齢別出生率(千人当り)は、35歳~39歳では47.2ですが、40歳~44歳では8.3まで大幅に低下します。少子化対策は一年遅れると、人口ピラミッドの歪みからその効果は大きく低下することが予想されます。なお女性の年齢別出生率は、25歳~29歳では87.4、30歳~34歳では96.3です。

(2013年03月01日「研究員の眼」)

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