コラム
2013年02月12日

現物給付保険について

小林 雅史

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新聞報道によれば、規制緩和により、生保会社に保険金の代わりに介護や葬儀などの現物を顧客に提供する現物給付保険の販売が認められるとのことである。

現物給付保険とは、保険契約の対象となっている人が死傷したり、介護が必要な状態になったりした際に、保険金の代わりにサービスや物品を提供する仕組みで、保険会社が提供するほか、子会社や提携した会社に任せて、保険会社が費用を肩代わりする手法もあり、損害保険では、自動車事故の示談交渉の代行や車の応急修理といった現物給付が広く認められていると説明されている。

こうした説明のとおり、損害保険は、実際に発生した損害を補償するという仕組みから、本来的に現物給付保険としての要素を含んでおり、現物に関する損失の原状回復または再調達を可能とするものとして現物給付が認められ、自動車保険、ガラス保険などの約款に実際の規定がある。

生命保険については、2010年4月に施行された保険法の審議過程で、介護施設への入居権や葬儀サービスの提供などの現物給付保険の可能性が議論されたが、監督規制が不十分などとして法定は見送られたという経緯がある。

一方欧米では、生命保険の起源がヨーロッパ中世のギルドでの死亡などの際の相互扶助や、17世紀イギリスの友愛組合の死亡時の埋葬費用などの金銭給付であるとされていることから、葬儀費用を賄うための生命保険は、生命保険の最も古い形態とも称され、主に高齢者向けに、小額の定期保険または終身保険が、埋葬保険(Burial insurance)、葬儀保険(Funeral insurance)または葬儀費用(最終費用)保険(Final expense insurance)として販売されている。

日本においても、一部の会社が死亡保険に付帯するサービスとして葬儀の生前予約システムを訴求するなど、現物給付的なサービスを提供している例があり、過去には、1963年6月、協栄生命が一時払年金保険に加入すれば終身、追加負担なしで自前の年金ホームに入居できるという年金ホーム特約を発売していた例があった。

協栄生命の年金ホームは、1985年12月の保険審議会答申においても、「一時払で個人年金に加入し、その年金給付を年金ホームの入居料に充てる仕組みであり、契約者は生涯年金ホームに居住し、追加負担なしに終身、食事・医療・介護等のサービスを受けることが可能である」と紹介されたとおり、現物の値上がりリスクを生保会社側が負担する点で、実質的な現物給付保険となっていたものと考えられる。

本格的な現物給付保険の開発に向けては、現物の値上がりリスクへの対応などが鍵であり、現物給付保険や保険に付帯するさまざまなサービスの今後の動向について引き続き注視していきたい。

(2013年02月12日「研究員の眼」)

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