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年金財政は後回し?-審議が進まない「特例水準の解消」
保険研究部 上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任 中嶋 邦夫
年金を含む社会保障・税一体改革関連法案が衆議院で可決されてから、1週間が過ぎた。
しかし、年金に関して最優先かつ影響範囲が大きい「特例水準の解消」は、いまだ可決されていない。
この措置を含む国民年金改正法案は、年金関連3法案の中で唯一の予算関連法案として2月10日に国会へ提出され、厚生労働委員会に付議されることになった。他の法案は、2月17日の社会保障・税一体改革大綱の閣議決定後に国会へ提出され、「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」に付議された。同特別委員会に付議された法案は先日衆議院を通過したが、先に国会へ提出された国民年金改正法案が置き去りになっている状況だ。
特例水準の解消とは、2004年改正の経過措置である特例水準での年金給付を2013年度末にやめ、2014年度から本来の水準で年金給付を始める措置のことである。2004年改正では、年金財政を健全化するために「マクロ経済スライド」という給付削減ルールが導入されたが、このルールは経過措置である特例水準が継続している間は発動されないことになっている。2004年改正時は、物価や賃金の上昇によって2008年度にもマクロ経済スライドが自動発動される予定だったが、物価や賃金の見通しと経過措置の設計を失敗したため、まだ始まっていない。そこで、これ以上の健全化の遅れを食い止めるため、いわば手動スイッチでマクロ経済スライドの発動条件を整えるのが「特例水準の解消」である。
衆議院を通過した被用者年金の一元化やパート労働者への厚生年金の適用、無年金者対策(受給資格期間の短縮)も重要な施策に違いないが、特例水準の解消は現在のすべての受給者に影響するとともに、年金財政の健全化を通じて将来世代にも影響する重要な政策である。かつ、その実施は今年の10月から予定されている。時期が迫っているとはいえ、影響範囲が大きいため、国会での十分な議論や国民への丁寧な説明も必要であろう。引き続き、今後の動向に注目したい1。

03-3512-1859
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