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- 「グローバル人材」に求められる基本的要件-「組織の強さ」を生み出すベースとしての「個の強さ」の視点から-
中堅・中小企業も含め企業のグローバル化が進展する中で、それを支える人材として、いわゆる「グローバル人材」の育成・活用が話題に上る機会が顕著に増えている。
グローバル人材とはどのような能力を持った(持つべき)人物像であるかについては、様々な見解があるが、その代表例と見られる内閣「グローバル人材育成推進会議」での論議によると以下の定義がなされている(平成23年6月22日付け同会議「中間まとめ」より)。
英語など語学力等のスキルの重要性は当然であり様々な機会や場でそのあり方が論議されているが、今回は、より基本的な能力や専門性といった観点での要件について以下に私見を述べたいと思う(筆者は、多くの日本企業の有する組織力の強みを多国籍な有能人材を含めたチームにおいて活かせるハイブリッドで強い組織への転換・構築を期待しているが、そのような組織においては個々の人材がその能力を発揮することが肝要であると考える)。
洋の東西を問わず国際的なビジネスパーソンとして成果を挙げるには、その人物が個人として、信用・信頼される人物であることが不可欠と考えられる。そのためには、第一に物事を偏見なく論理的に考え、自分の意見や主張を正々堂々と述べられることが必須である。国際会議の議長にとって最も難しい仕事は、「インド人の発言を抑制することと、日本人の発言を促すことである」との有名なジョークがあるが、自らの考えをタイムリーにきちんと主張し、相手に理解・納得させるには、論理的な思考力や討議力、それを伝えるスキルである英語等語学力が重要であり、そのための若年時からのトレーニングが不可欠である。日本の若者を見ていると、知識や意見を持っていても、恥ずかしいからとか間違っているかもしれないとの不安から発言を控える人が多いように感じるが、積極的に発言することが是であることを家庭教育や学校教育の場で明瞭に示すことが大切であろう。さらに、日本のように暗黙知をベースにしたコミュニケーションが成り立ちやすい社会(高コンテクスト社会)とは異なる社会で育ち生活する人々や、それらの人々を含む組織や会議において自分の意思や情報をきちんと伝達するには、相手に「察してもらったり」、「気配りしてもらう」ことを期待しても難しく意思疎通が不十分になってしまうリスクが大きく「形式知化」して示す努力が求められるだろう。
第二に、個人の強みや専門性の重要性を認識し、意識して積極的に磨くことが大切であると考える。この点に関し、筆者自身、若年時に参加したある国際会議での夕食時に、隣に座った初対面のイギリス人女性からに突然「貴方の強みは何か」と問われ当惑した経験がある。日本人のビジネスパーソンの場合、「私はXX会社の者です」と答えがちであるが、国際ビジネスの場では、所属する企業の社名ではなく、マーケティング、会計、人事、製品開発などといった各分野の専門家であることが評価の対象になることを知らされた出来事であった。ここで、豊富な経験と知識を持って経営全般に通じたゼネラリストも貴重な専門家であるが、この概念はわが国の多くの企業において用いられている、多くの職場を経験する「ゼネラリスト」のそれとは異なるとの印象がある。
第三に、日本の歴史や文化についての理解を深める教育の重要性を挙げたい。様々な国籍を有する人々と付き合う中では、自国の事を知って語れる、いわゆるアイデンティティーのある人物が評価される。この点について、アジア諸国との関連性も大きい近現代史の授業が、多くの高校で、スケジュールの関係から省略されてしまうことが多いと聞くが、古代史等に優先しても近現代史教育の時間を確保するよう努めることが必要であると思う。
加えて、幅広い教養が身に付く機会を与えることも必要だろう。英語での会話においても、専門用語を主体にやりとりできる「ビジネス会話」と比べて、幅広いトピックスが含まれる「日常会話」の方がより難しいことは多くの方が経験されているとおりであり、個々人の教養が、その人に対する尊敬の念を与えビジネスにおける重要局面の突破要因になるものと考える。
以上、グローバル化が進展する中で求められる人材のベースとなる能力や素養などについて述べた。「内向き志向」と表現されることが多い日本の若者であるが、わが国の高成長を実感したことがない多くの人にとって、国際社会における日本のポジションや役割とその中でのビジネスの重要性やチャンスなどについて知る機会が少ない実状がその大きな要因になっていると感じている。企業および学校や家庭で、上記に関してきちんとした内容の分かりやすい教育を行い、若者の意欲とやる気を促しサポートすることが非常に重要であると考えている。
(2012年05月31日「研究員の眼」)
平賀 富一
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