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- 米国高齢層の実態と所得・消費支出構造への影響
2012年03月30日
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- 米国でも他の先進国同様に人口の高齢化が進んでいる。特に、ベビーブーマーがリタイヤの時期を迎えており、今後、高齢化のスピードは加速する。また、高齢者の就業率が上昇しているが、その場合、フルタイムからパートタイムに切り替えるなど、加齢を考慮した就業形態がとられる傾向がある。
- 高齢化に伴い単身世帯化が進行している。一世帯当たりの平均人数は、1970年の3.1人から2007年には2.6人に低下し、典型的な家計とされた子供のいる夫婦が、単身世帯に最大シェアを奪われるなど、生活様式や経済活動の変化をもたらしている。
- 寿命の伸長等、高齢化に伴うリタイヤ後の生存年数が増加している(男性は1950年の8年から2000年は19年)。また、金融危機による資産の目減りも指摘されるなど、リタイヤ時に十分な金融資産を保有していない個人の不安等の要因も重なり、リタイヤ年齢延長の動きを強めつつある。
- 高齢就労者の一人当たり所得は増加しているものの、就労者中のフルタイム比率の低下等により、就労者年代との比較では低水準にある。また、上記のように高齢層の単身世帯化が進行している。こうした高齢層の増加は、社会全体の世帯あたりの所得の伸びにも影響しており、実質ベースの世帯あたりの所得は1996年以来の水準へと低下している。ただし、高齢層の所得は、年金を中心に一定レベルが確保されており、65歳以上の貧困率は65歳未満の層よりも低位にある。
- 高齢層の消費については、他世代同様、住居費が中核を占める。半面、他世代との相違点としてヘルスケア支出の突出が挙げられる。ヘルスケア支出はGDPの7割を占める個人消費の中で16%を占める。また、赤字拡大に悩む財政にとっても主要な支出となっているが、高齢化の進行がヘルスケア支出をさらに増加させよう。
- 先進諸国との比較では、米国の高齢化の速度は遅い方であるが、そのことが米国にとって問題を小さくするわけではない。これには、米国が移民を受け入れていることも影響しているが、その結果として生活様式の多様化が加速している。高齢化に関連してこうした影響が消費等に及ぼす影響にも留意する必要があろう。
(2012年03月30日「ジェロントロジーレポート」)
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