2011年11月10日

10月マネー統計~銀行貸出がついにマイナス圏を脱却

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向: 23ヶ月ぶりの前年比プラス
・主要銀行貸出動向アンケート調査: 企業の資金需要は下げ止まり
・マネタリーベース: 介入資金の放置により足元はさらに拡大
・マネーストック: 投資信託が2年半ぶりの低水準に

■introduction

日銀が発表した10月の貸出・資金吸収動向等によると、銀行総貸出(平残)の前年比伸び率は0.1%と前月の同▲0.3%からプラス圏へと上昇した。前年比でのプラスは実に23ヶ月ぶりとなる。ただし、要因として、前年の貸出残高が減少し、比較対照のハードルが切り下がってきた影響も大きい。前月比で見ても9月以降増加基調となってきているものの、資金需要の勢いはまだ力強さに欠ける。
内訳では、都銀等が前年比▲1.6%減、地銀が同1.8%増と従来同様の構図だが、都銀もマイナス幅縮小の動きが顕著に。貸出先別(8月まで)では、中小企業向けの低迷が続いているものの、社債発行が困難となっている電力会社向け貸出増の影響もあり、大企業向けが改善している。
来月以降、前年比のハードルがさらに下がること、今後も電力会社向けの増加が見込まれることから、銀行貸出は当面前年比プラスを維持するとみられるが、注目点は牽引役となる復興需要だ。被災地域の貸出金の伸び率を見ると、全国平均こそ上回るものの限定的であり、復興に伴う資金需要はあまり顕在化していない模様。今後どのタイミングでどの程度の規模で出てくるかが銀行貸出のポイントになる(図表1~5)。

(2011年11月10日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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