2011年04月28日

中国経済:新5ヵ年計画で中国が目指すものとは?

三尾 幸吉郎

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  1. 中国では、今年3月に第12次5ヵ年計画を採択、「科学的発展観」を主題とし、「経済発展パターンの転換加速」を主軸として、「小康社会」を全面的に建設するための基礎を築くとした。「科学的発展観」や「小康社会」よりも「経済発展パターンの転換加速」に紙面の多くを割いて説明しており、その重要性の高さが窺い知れる。
  2. 現在の中国経済は、規模では世界第2位に浮上したが、一人当たりGDPの水準は米国の10分の1に留まり、「世界の工場」と呼ばれる工業中心の産業構造で、世界最大の経常黒字を計上しつつ経済成長してきたが、エネルギー効率が低位、個人消費が極端に少ない、サービス産業が未成熟などの課題点もある。
  3. 新5ヵ年計画が終了する2015年の中国経済を試算してみると、米国経済が突出する世界経済が、5年後には中国の経済規模が拡大して米中G2化が進展、中国は海外経済に過度に依存しない経済構造への転換の要請が高まる。また、国内の賃金上昇で、後発新興国が「世界の工場」の立場を脅かすのは必至で、中国は先行新興国や先進国が支配する市場を獲得することが経済成長を持続するための前提条件となる。
  4. そこで、中国は今回の5ヵ年計画で「経済発展パターンの転換加速」を打ち出した。海外経済への過度な依存から脱却して、内需主導特に消費拡大と消費関連サービス産業の育成を目指すと共に、省エネによるエネルギー効率改善、研究開発や生産関連サービス産業育成による技術革新、戦略的新興産業の育成で、一段上の国際競争力獲得を目指す。
  5. 「経済発展パターンの転換加速」を順調に進められるか否かは、高成長志向が根強く残る地方政府の協力と民間活力による新興産業の勃興がカギを握ることになるだろう。


2015年の名目GDP(予測)

(2011年04月28日「Weekly エコノミスト・レター」)

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