2010年09月24日

ドルの信認低下と通過のパワーバランス ~どの通貨がドル安を引き受けるのか?

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要 旨

1.基軸通貨ドルの中長期的な下落トレンドが続いている。最近ではギリシャの財政問題に端を発するユーロの信認や米国の景気回復期待剥落などが市場のテーマになっているが、ドルの構造的な信認(信用力)問題が解決した訳ではなく、未だ燻り続けている。
2.ドルの信認問題の背景には米国ならびにドルが抱える2つの要因、すなわち解消の道筋が見えない「双子の赤字」と今後とも続くとみられる「超大国米国の地位低下」があり、新興国では既に一部ドル離れの動きが見られる。
3.今後ドルの信認が低下し、為替レートが下落した場合に、上昇する通貨は何なのだろうか。高い成長が予想される新興国には、海外から投資資金が集まりやすいという点での通貨高圧力が存在する。さらに、アジア新興国の多くは、通貨高要因となる多額の経常黒字を抱えている。それにもかかわらず従来通貨が下落、またはその上昇が限定的に留まってきた背景には巨額の為替介入の存在がある。
4.通貨管理による新興国通貨安に対して先進国からの不満が高まっていることもあり、これら新興国通貨は中長期的に上昇していく可能性が高いが、新興国側の強い抵抗も予想される。ユーロが問題を抱える中で、今後新興国通貨が上昇しない、若しくは上昇が限定的に留まる局面では、日本円への上昇圧力が高まる可能性がある。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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