コラム
2010年04月02日

保険法施行に伴う保険証券の印紙税取扱明確化

小林 雅史

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2010年4月1日に施行された保険法を踏まえ、印紙税の課税物件である保険証券の課税範囲を明確化するため印紙税法および印紙税法施行令が改正され、4月1日から施行された。

保険証券について、商法においては、保険契約者の請求があった場合に発行するものとされ、その記載事項が定められていたが、保険法においては、保険契約者の請求がなくても保険契約の締結後遅滞なく発行するものとされ、また、保険法は共済契約にも適用され、共済契約では共済証書などの名称が用いられていることなどから、保険証券という名称を使用せず、契約締結時の書面交付という形で記載事項も含めて定められている。

なお、保険法の契約締結時の書面交付に関する規定は任意規定(法律の規定と異なる当事者間の合意があれば、その合意が法律の規定に優先される規定)とされていることから、従来どおり保険証券や共済証書といった名称を付することは許されるものと考えられている。

こうした保険法の制定を踏まえ、従来から印紙税法上、200円の印紙税が課税されていた保険証券について明確化が行われている。

従来は、印紙税法別表第一第10号で課税物件名「保険証券」、課税標準及び税率「一通につき200円」とされ、国税庁の印紙税法基本通達で「保険証券とは、保険者が保険契約の成立を証明するため、保険証券の名称を用いて保険契約者に交付するものをいう」、「保険証券として記載事項の一部を欠くものであっても保険証券としての効用を有するものは、第10号文書(保険証券)としてとして取り扱う」とされていた。

改正印紙税法別表第一では、「保険証券とは、保険証券その他名称のいかんを問わず、保険法その他の法令の規定により保険者が保険契約を締結したときに保険契約者に交付する書面(保険契約者からの再交付の請求による交付するものを含み、海外旅行保険等政令で定める保険契約に係るものを除く)をいう」と、「保険証券」の定義が新設された。

印紙税法施行令において、印紙税の課税対象となる保険証券に該当しない書面を交付する保険契約として、

(1)海外旅行保険契約、国内旅行保険契約

(2)航空機搭乗保険契約

(3)既に締結されている保険契約(既契約)について次のいずれかの定めがあり、その定めに基づき既契約を更新する保険契約

 イ)既契約の保険期間の満了に際し、保険者または保険契約者のいずれかから既契約を更新しない旨の意思表示がない場合は既契約を更新する旨の定め

 ロ)既契約の保険期間の満了に際し、新たに保険契約の締結を申し込む旨の書面を用いることなく、既契約の保険事故、保険金額等と同一の内容で既契約を更新する旨の定め

(4)共済契約

が挙げられている。

生命保険会社では、保険法の施行により約款を改定し、保険契約締結時に保険証券を発行することやその記載事項を規定する例が多い。

一方、生命保険会社の約款では、保険料の不支払による保険契約の失効後、一定期間内であれば保険契約を復活できるという条項を設けている例があるが、その際には、既契約も含め、保険証券を改めて発行しないという既定を設けている例もあるようである。

保険法の改正に伴う関連法の動向や、生命保険会社の取り組み等について引き続き注視していきたい。
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