- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 米国経済 >
- 734万円対2500万円
コラム
2010年03月25日
昨日3月24日、今通常国会に提出される「郵政改革法案」の骨格が発表された。現状(小泉政権の郵政民営化路線)からの大きな変更点は、
簡保の設立趣旨は「国民に、簡易に利用できる生命保険を、確実な経営により、なるべく安い保険料で提供し、もって国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進する」(旧簡易生命保険法第1条)ことであろう。その趣旨をどこからどう解釈したら2500万円という金額が出てくるのか。民間生保全社の個人保険の保障額は2008年度末現在で933兆円、国民1人あたり734万円に過ぎないのだ。
確かにかんぽ生命の販売する保険には、民営化以前のような明示的な政府保証はないのかもしれない。しかしながら、明治初年の前島密以来の伝統のある郵便局で販売されることに加えて、政府が出資する親会社が3分の1超を保有するという事実は、暗黙の政府保証の存在を指し示している。少なくとも、消費者が暗黙の保証が存在すると考えても不思議はない。
そうしたガリバーに対して、民間生保はいったいどのように競争を挑めばよいのだろうか。「官業の民業圧迫は許せない」と叫んでも、無力感が漂うばかりである。
今回の法案の中では、金融2社にも全国一律サービスが義務づけられるようだが、親会社の株式保有の継続と限度額の引き上げは、かえって地方を破壊しかねないと思う。全国ベースでほぼ横ばいで推移している個人金融資産残高が地方部では減少に転じたと見られる中で、資金がゆうちょ銀行にシフトすることは、地方部の金融機関に壊滅的な打撃を与えかねないからである。
参院選などを契機に再考されることを願うばかりである。
- 全株式を外部に売却するとしていたゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式について、政府が出資する親会社が3分の1超を保有し続ける
- 政令改正で、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額(現行1人あたり1000万円)を2000万円まで、かんぽ生命の保障限度額(現行1人あたり原則1000万円)を2500万円まで引き上げる
簡保の設立趣旨は「国民に、簡易に利用できる生命保険を、確実な経営により、なるべく安い保険料で提供し、もって国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進する」(旧簡易生命保険法第1条)ことであろう。その趣旨をどこからどう解釈したら2500万円という金額が出てくるのか。民間生保全社の個人保険の保障額は2008年度末現在で933兆円、国民1人あたり734万円に過ぎないのだ。
確かにかんぽ生命の販売する保険には、民営化以前のような明示的な政府保証はないのかもしれない。しかしながら、明治初年の前島密以来の伝統のある郵便局で販売されることに加えて、政府が出資する親会社が3分の1超を保有するという事実は、暗黙の政府保証の存在を指し示している。少なくとも、消費者が暗黙の保証が存在すると考えても不思議はない。
そうしたガリバーに対して、民間生保はいったいどのように競争を挑めばよいのだろうか。「官業の民業圧迫は許せない」と叫んでも、無力感が漂うばかりである。
今回の法案の中では、金融2社にも全国一律サービスが義務づけられるようだが、親会社の株式保有の継続と限度額の引き上げは、かえって地方を破壊しかねないと思う。全国ベースでほぼ横ばいで推移している個人金融資産残高が地方部では減少に転じたと見られる中で、資金がゆうちょ銀行にシフトすることは、地方部の金融機関に壊滅的な打撃を与えかねないからである。
参院選などを契機に再考されることを願うばかりである。
(2010年03月25日「研究員の眼」)
明田 裕
明田 裕のレポート
新着記事
-
2025年06月24日
今週のレポート・コラムまとめ【6/17-6/23発行分】 -
2025年06月23日
東南アジア経済の見通し~政策対応で内需は底堅いが、外需は不透明感増し、景気減速へ -
2025年06月23日
内国歳入法899条項(案)-TACOで終わらなければ、日本にも影響か? -
2025年06月23日
インフレ時代にオフィス市場で普及が進むと期待されるCPI連動条項 -
2025年06月23日
マスク着用のコミュニケーションへの影響(1)-コロナ禍の研究を経て分かっていること/いないこと
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年06月06日
News Release
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
【734万円対2500万円】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
734万円対2500万円のレポート Topへ