コラム
2010年02月10日

中国海南のホテル代が急騰、普通の部屋で一泊26万円?!

沙 銀華

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●不動産バブルが気になるが・・・

中国経済は、世界規模の金融ショックの被害も比較的小さく、短期間の内に先進国よりいち早く回復し、GDPも8%以上を保って成長している。こうした経済情勢の下で、不動産市場の価格が急上昇し、全国平均不動産価格が、2000年当時1平方メートル2,000元(約28,000円)前後だったのが、2009年には5000元前後となった。また、上海市の場合、2000年には1平方メートル3,800元前後だったのが、2009年には13,000元前後となり、2008年から2009年までの全国の価格上昇率が22.54%であったのに対して、上海市では51.42%となった。そのため、バブル状態であるとの懸念が持たれることも当然ともいえる。

●ホテル代の急騰、ドバイを越える価格

ところが、更に驚くべきは、上海の不動産市場を上回るバブルとなっているものがある。それが、中国海南島のホテルの宿泊代金である。中国旧正月である春節(今年は2月14日)前後の三亜市のホテル代金はなんと通常の10倍以上に値上がりしている。普段一泊数百元の部屋は、数千元に値上げされ、例えば、同市の有名な5つ星ホテルである「文華東方酒店」の最も安い部屋でも、春節前後の宿泊代は18,400元(約26万円)、もう少し良い部屋なら、なんと23,000元(約32万円)の部屋もある。同市の海岸沿いの5つ星のホテルは、すべて15000元以上となっている。もし、3泊4日の予定なら、ホテル代だけで45,000元(約63万円)近くかかることになる。

しかし、高額なホテル代に関わらず、客足が伸び悩むこともなく、春節前後の予約は殆ど一杯となっているようだ。中国大手ネット販売の旅行会社である「中国旅行熱線」によると、2009年の春節は、210部屋を販売したが、今年はすでに520部屋以上販売したとのことである。

筆者は、当初これは話題づくりの一種ではないか?と疑問を持っていたため、自ら中国のネット販売旅行会社である「携程旅行ネット」を使い、以前三亜で泊まったことのあるホテルを探したところ、確かに通常一泊700元前後の部屋が、春節前後は、なんと1万元を超える値がついていた。
写真:海南省三亜市のホテル「亜龍湾環球城酒店」/海南省三亜市のホテル「亜龍湾金棕櫚度假酒店」

●海南島の人気が急上昇した裏には・・・

元々、海南島は、中国の「ハワイ」と賞賛されている。今年の中国北部は特に厳冬で大雪に見舞われており、今年1月には、北京で64年ぶりに氷点下16℃を記録、かつ数十年ぶりの大雪に見舞われた。それに対して海南島三亜の気温は、例えば今年の2月9日は最低気温23℃、最高気温31℃と、まるで真夏のような気温である。そのため、春節という伝統的な大型連休は、夏らしいところで過ごしたいと考える富裕層が増え、この数年間、海南で春節を過ごすことが富裕層で流行になっているようである。

しかし、そのような高額なホテル代を払うなら、ヨーロッパ、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイに旅行すれば、ホテル一泊の料金で一週間の旅が賄えるのに、なぜ、わざわざ海南島にいくのだろうか?

理由としは、最近、中央政府は国有企業の役員・高級幹部、国家公務員などの海外出張を厳しく制限しており、国内出張の名目での家族連れの海南島への「公費旅行」なら、その制限を回避できるからではないかとの説もささやかれているようだ。また、富裕層は普段忙しいため、家族のための時間が取れず、春節に家族全員で近場の海南島で過ごすケースも少なくないと言われている。

しかし、中国の不動産市場の高騰、ホテル代が世界一という輝かしいニュースが躍る一方で、その裏では、年々深刻化している問題もある。毎年春節の沿海部への出稼ぎ労働者の帰省は、数億人の「民族大移動」であり、その交通混雑は未だに解決されていない。また、失業問題(昨年は600万の大学生が就職できなかった等)、農村部の貧困化と都市部の一部市民の貧困化は毎年深刻化しており、一般庶民の生活とますますかけ離れていくこのようなバブル状態がどれだけ続くのか、甚だ疑問である。
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