- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経営・ビジネス >
- 雇用・人事管理 >
- 労働力の非正規化の日韓比較 -その要因と社会への影響-
労働力の非正規化の日韓比較 -その要因と社会への影響-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中
大沢 真知子
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
日韓両国ともに、労働力の非正規化が進展している。90年代後半から2000年にかけて日本や韓国では非正規雇用者が急激に増加しており、彼らの雇用や生活に対するセーフティーネットの提供が社会的な問題として浮上した。もっとも、日本では韓国以上に、中核に位置する壮年男性の雇用が守られている点では違いがある。しかし、変化の方向をみると、どちらの国でも中核労働者の割合が減少し、周辺に位置する労働者が増加している。
2
就業形態の変化をもたらしている主要因は、経済のグローバル化により、より柔軟に活用できる労働者の需要が高まったことや、コストを削減することで競争力をつける必要性が高まったといった需要側の要因が大きく影響しているとおもわれる。これに対してどちらの国でも新規採用において正規社員の採用を抑制する形で対応している。そのために、若い世代になるほど、非正規化の影響を強く受けるようになっている。
3
日韓どちらとも男性より女性の非正規労働者の割合が高いが、日本の方が男女差が大きい。日本は労働力の非正規化が女性を中心として進行して来たことに比べて、韓国では男性にも非正規化の影響が顕著である。特に若年労働者層では、女性よりも男性の方が非正規労働者の割合が高い。すなわち、IMF経済危機によって内部労働市場が完全に形成される前に一部崩壊されてしまったのが男性の非正規化を促進した一つの理由になっていると言えるだろう。
4
本論文のファインディングスが示唆するのは、企業と従業員との関係が変質していることである。両国において、企業の従業員に対する生活保障機能が急速に低下している。
5
セーフティーネットから排除される労働者が増加しつつあるなかで、国民の生活をどう保障していくのか、そのための社会的連帯は可能なのか、企業の社会的責任をどう追求していったらいいのか、わたしたちひとりひとりが真剣に考える時期にきていると考える。
(2009年08月26日「ニッセイ基礎研所報」)

大沢 真知子
新着記事
-
2025年04月18日
ECB政策理事会-トランプ関税を受け6会合連続の利下げ決定 -
2025年04月18日
トランプ関税へのアプローチ-日EUの相違点・共通点 -
2025年04月18日
金融セクターにおけるリスクと脆弱性(欧州 2025春)-ESAの合同報告書より。地政学的リスクとサイバーリスクに重点。 -
2025年04月18日
トランプ関税発の円高は止まるか?~マーケット・カルテ5月号 -
2025年04月18日
「未定」が広がるのか、それとも見通しを示すのか?~関税政策と企業の開示姿勢~
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【労働力の非正規化の日韓比較 -その要因と社会への影響-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
労働力の非正規化の日韓比較 -その要因と社会への影響-のレポート Topへ