コラム
2009年05月18日

新型インフルエンザの国内発生

小林 雅史

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5月18日現在、新型インフルエンザは日本においても海外から帰国した4人の感染のほか、国内での感染者が126名発生し、世界41カ国・地域では8800人を越える感染者が発生している。

国内での感染者は現在のところ兵庫県、大阪府に集中しており、その多くは高校の生徒や家族・教諭等であるとのことだが、今後の感染者の拡大が懸念される。

本年2月改定の「新型インフルエンザ対策行動計画」における「海外発生期」から「国内発生早期」となったわけであり、国内での感染拡大をできる限り抑えるために、(1)患者への入院措置、(2)積極的疫学調査と接触者への外出自粛、(3)地域住民全体への抗インフルエンザウイルス薬の予防投与・人の移動制限を伴うウイルス封じ込めの可否の判断、(4)発生した地域における学校等への臨時休業、集会・外出の自粛要請、個人防護の徹底の周知、(5)ワクチンの製造推進、(6)事業者への不要不急の業務の縮小取組・職場での感染予防策の開始要請、(7)社会機能維持に関わる事業者に対する事業継続に向けた取組要請等が行われることとなる。

厚生労働省は、今回の新型インフルエンザの特徴について、通常の季節型インフルエンザの症状に類似しており、感染性は強いものの、諸外国においては多くの患者が軽症のまま回復していることから、病原性は低いものとしており、5日16日に発表された対策はつぎのとおりとなっている。

患者や濃厚接触者が活動した地域等(現在、兵庫県神戸市の一部・芦屋市の全域、大阪府豊中市・吹田市・茨木市の各全域)における、
1)積極的疫学調査の徹底
2)外出時の人混みでのマスク着用、うがい等の呼びかけ
3)事業者や学校等に対する、時差通勤・時差通学等、従業員・生徒の感染機会を減らすための工夫の検討の要請
4)集会・スポーツ大会等については、一律の自粛要請は行わないものの、開催の必要性の検討、感染機会を減らすための工夫の検討の要請
5)学校・保育施設等について、患者発生の場合の臨時休業の要請、1週間ごとの臨時休業の継続可否の再検討(これを受け、兵庫県、大阪府では、1000を超える公立学校・保育施設等が休校・休園を決めたとのことである)
6)事業者に対する事業運営における感染機会を減らすための工夫の検討の要請
7)電気・ガス・水道、食料品、生活必需品等の事業者に対する供給体制の確認や事業継続に向けた注意喚起 等

また、諸外国では基礎疾患(糖尿病等)のある人を中心に重症化する傾向があり、死亡例も報告されていることから、感染の拡大が進んだ段階においては、基礎疾患のある人が重症化しないような医療供給体制の充実・各医療機関の機能明確化が重要とされ、軽症の患者については、自宅での療養、医療従事者の訪問等、一般の患者と接触しないような工夫等、地域の実情に応じた対応を行うこととされている。

5月17日、WHOのフクダ事務局長補代理は、「ニューヨークやメキシコのような地域的感染拡大は、日本ではまだ見られない。日本の状況は、初期のニューヨークに似ている。今後も注視していく」と述べたとのことであり、パンデミック警報レベルのフェーズ5からフェーズ6への引き上げの可能性も示唆したようである。

今後、冷静な対応が望まれるが、引き続き注視していきたい。

(2009年05月18日「研究員の眼」)

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