2008年07月11日

中国経済の変調~環境変化への対応力高いが楽観はできない

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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  1. 08年入り後も中国経済の成長のテンポは速いが、以前に比べると鈍化しており、エネルギー・食糧の価格上昇と輸出規制の影響で貿易黒字は縮小に転じている。インフレ率は食品価格の押し上げにより目標を上回る水準での推移が続いている。
  2. 当局は、インフレの抑制に政策をフル動員しているが、外貨流入圧力の増大と株価の不安定化を背景に08年入り後は利上げを見送っている。人民元相場は、人為的なコントロールを継続しながらも、従来よりも速いテンポで調整するようになっている。
  3. 外部環境の急変振りに比べると、中国経済の変調の度合いが小さいのは、エネルギー・食糧の輸入依存度が抑えられている一方で、製品輸出分野でなお高い競争力を有しているからだ。
  4. それでも、インフレが長期化の様相を呈する一方、資産価格の不安定化、輸出環境の一段の悪化が見込まれ、環境は厳しさを増している。今後の引き締めの度合いやピッチ、構造改革とのバランスを間違えば、オーバーキルを招くリスクもある。政策当局は、内外の経済・金融動向や資産価格の動向を睨みながら、細心の注意を払いつつ、統制価格、法定金利、人民元相場の調整を進め、安定的高成長の持続を図ることになるだろう。
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(2008年07月11日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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