2008年06月04日

法人企業統計08年1-3月期~企業部門の変調がより鮮明に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・23四半期ぶりの減収減益
・設備投資は4四半期連続で減少
・1-3月期・GDP2次速報は上方修正を予測

■introduction

財務省が6月4日に公表した法人企業統計によると、08年1-3月期の全産業の経常利益は前年比▲17.5%(07年10-12月期:同▲4.5%)と、3四半期連続の減益となった。原材料高などによる利益率の悪化が続いたことに加え、売上高が03年1-3月期以来、20四半期ぶりに減少したことで、減益幅は前期から急速に拡大した。減収減益となったのは、02年4-6月期以来23四半期ぶりである。
売上高経常利益率は全産業ベースで3.5%となり、前年同期よりも▲0.7ポイント悪化した。製造業が▲1.1ポイント、非製造業が▲0.6ポイントの悪化となった。製造業では原材料高に伴う変動費の大幅増加が利益率悪化の主因となっているのに対し、非製造業では人件費要因が利益率悪化の主因となっている。人件費の伸び自体はそれほど高くない(前年比0.2%)ものの、売上高が減少(前年比▲4.5%)に転じたため、売上高人件費率が大幅に上昇したためである。
経常利益を業種別に見ると、製造業が前年比▲15.7%(10-12月期:同▲3.3%)、非製造業が前年比▲18.6%(10-12月期:同▲5.7%)とともに前期から減益幅が急拡大した。製造業では、新興国向けを中心とした輸出の好調が続く輸送機械は前年比2.6%と増益を維持したが、化学(同▲46.0%)、鉄鋼(同▲27.4%)、一般機械(同▲11.0%)などは前年比で二桁の減益となった。非製造業では原燃料費高騰によるコスト増が続く電気が前期に続き赤字(▲1943億円)となったほか、建築基準法改正に伴う建築着工の落ち込み、マンション販売の低迷を受けて建設業(前年比▲50.0%)、不動産業(前年比▲10.9%)が大幅減益となった。また、非製造業の利益の約3割を占める卸・小売は前年比▲20.4%と前期に続き二桁減益となった。
07年度の経常利益の動向を振り返ると、07年4-6月期には前年比12.0%の高い伸びとなったものの、7-9月期に同▲0.7%と21四半期ぶりにマイナスに転じた後、年度末にかけて減益幅が急拡大した。この結果、07年度の経常利益は前年度比▲3.3%となり、年度ベースでは01年度(▲19.6%)以来6年ぶりの減益となった。
前期までは交易条件の悪化に伴う利益率の悪化が減益の主因であったが、1-3月期には売上の減少、利益率の悪化がともに収益を押し下げる方向に働く「減収減益」となった。非製造業の売上高減少は国内需要の低迷を反映したものと言える。また、製造業の売上高も7-9月期の前年比7.6%をピークに10-12月期が同6.5%、1-3月期が同5.9%と伸び率は徐々に低下している。
ここにきて個人消費が息切れしつつあること、円高や米国経済急減速の影響で輸出の伸びはさらに鈍化する可能性が高いこと、原材料高によるコスト増は今後も続くことが見込まれることなどからすれば、08年度入り後も企業収益の低迷は続く可能性が高い。これまで景気を牽引してきた企業部門の変調がより鮮明になったことで、02年初に始まった戦後最長の景気回復はすでに途切れている可能性が高まったと言えるだろう。

(2008年06月04日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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