2008年03月26日

株式市場における投資家の行動 -投資家行動は変化したのか-

京都大学経営管理大学院 川北 英隆

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2004年2月、株式市場における投資家行動を定量的に分析した。それによれば、個人投資家は逆張り的な(株価が上がれば売り、下がれば買う)投資家であった。投資信託には目立った特徴が見出せなかった。銀行、生保会社は逆張り、事業会社はどちらかといえば順張り的な(株価が上がれば買い、下がれば売る)投資家だった。海外投資家と年金信託は順張り的だった。
この分析の後、4年間が経過した。分析の直後に日本の株式市場はボトムを付け、その後、2006年の春まで急速な株価上昇を経験した。
本稿の最大の問題意識は、この間の株価の変化に伴い、投資家の行動に変化が見られたのかどうかにある。そこで今回、4年間のデータを付け加え、前回と同じ分析を行い、投資家行動の特徴に変化が生じているのかどうかを調べてみた。
今回の新たな分析の結果、2004年2月の分析結果と大きな差異が見られなかった。
年金信託の場合、順張り的な投資スタンスが継続していた。また、海外投資家や投資信託の場合、売買回転率が高まっていることから判断すると、順張り的、短期的な投資スタンスを強めていると考えられる。市場全体として見ると、順張り的、短期的な投資スタンスが強まったと判断できる。順張り的、短期的な投資スタンスはハーディング(他の投資家に追随し、群れる)状態に陥りやすい。
投資家のスタンスが順張り的、短期的だから好ましくないと断定はできない。とはいえ、企業経営者からすれば、もう少し猶予を持って企業業績を評価して欲しいということになろう。また、順張り的かつハーディング的な投資には、株価の変動を増幅する危険性がある。
他方、順張り的かつハーディング的な投資を冷静に観察することで、裁定的な投資のチャンスを見出すことができる。短期的かつハーディング的な投資が市場を支配している場合、株価が本来あるべき位置から外れてしまいがちだからである。

(2008年03月26日「ニッセイ基礎研所報」)

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