コラム
2008年02月15日

REITは、“腐っても鯛”-再評価すべき本来の商品特性

岡 正規

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2001年9月に時価総額2,600億円余りからスタートした不動産投資信託(REIT)市場は、昨年5月末には当初の約25倍、6.7兆円の規模にまで成長し、東証REIT指数も2,613とピークを示現した。しかし、現在(2008年2月13日)、REIT指数は、ピーク時からおよそ4割も下落した水準(1,529)で推移している。

この大幅下落の背景には、昨年8月の米国のサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題を契機とした世界的な信用収縮で、グローバルな投資資金が世界の株式・REIT市場離れを起こしたことがあり、外国人投資家が売買の過半を占めていた国内REIT市場も、その例外でなかったといえる。

そもそもREITとは、小口の上場証券(投資口)で不特定多数の投資家から集めた資金を、オフィスビルやマンション、商業施設などの物件でポートフォリオとして運用し、不動産賃貸や売却による利益を投資家に分配する仕組みである。わが国の不動産投資市場は、米国に次ぐ世界第二位の規模となっており、不動産利回りが海外に比べて高く、不動産からの賃料収入も堅調に推移している現状から、海外の投資家にとって日本は依然魅力的であることに変りはない。特に、一定水準の競争力を有する不動産を運用対象とするREITは、長期的にみれば安定的な分配金が期待できる、利回り商品のひとつとして評価されるべきであろう。

実際、直近のREITの年平均配当利回りは5.1%(時価加重)と、過去の最高水準(5.9%)ほどではないが、株式や債券でこれほどの高利回りを実現できる銘柄はなかなか見当たらない。また、投資口価格の割安度を判断する指標の一つであるPBR(株価純資産倍率)は、上場42銘柄中25銘柄が1倍を下回っており、投資口価格は概ね割安ゾーンにあるものと判断できる。

今年に入り、モルガン・スタンレーが保有するウェスティンホテル東京を約770億円で買収すると公表したシンガポール政府投資公社(GIC)は、一方で、REIT銘柄のひとつである日本プライムリアルティ投資法人の発行投資口を5.06%取得し、上位3番目の投資主となった。このように、政府系ファンドをはじめとした比較的長期の投資を行うとされる海外投資家が、サブプライムローン問題後も、長期保有に耐えうる大型優良物件への投資や、割安感の強まったREITへの投資を前向きに検討している証左といえよう。

過去1年、短期の投資マネーに翻弄されREIT相場が乱高下したことは、ミドルリスク・ミドルリターンというREIT本来の商品特性を見失わせるほどの不幸な出来事であった。もちろん、現在の割安・高配当利回り銘柄の中には、運用者のマネジメント能力などに問題のある銘柄もあろう。

投資の世界に「必勝」はないが、マネーゲーム化した市場のアップ・ダウンに一喜一憂せず、長期安定的な配当を重視する投資家にとって、REITは十分検討に値する商品ではないだろうか。優れたものは落ちぶれても価値を失わないことを「腐っても鯛」というが、今は落魄の身にあるREITも、本来は個人向け投資商品における期待の星のひとつだと考えている。
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岡 正規

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