2008年01月01日

年金運用における情報格差

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情報が証券価格に織り込まれる程度の差である市場の効率性は、年金運用にも重要な問題である。仮に、強度な効率性が実現する場合には、私的情報さえ直ちに証券価格に反映されるため、投資家は有利な情報により超過利益を獲得できないはずである。
しかし、最近でも、インサイダー取引が摘発されるように、情報格差の存在は実証されつつある。有利な情報を持つ投資家が、それを用いて、超過利益を獲得できるため、情報を持たない投資家のリスクは高まる。銘柄数を増やして分散投資を行っても、情報格差が存在する限り、このリスクを分散化して、軽減することはできない。理論によれば、このようなリスクは、リスクプレミアム要因の一つであり、公開情報が少ない銘柄は割安な評価となる。
市場の効率性を前提とすれば、投資家が保有すべきリスク資産は、市場ポートフォリオであり、リスク回避度に応じてインデックス・ファンドと無リスク債券を持つ、という伝統的な2ファンド理論が成立する。一方、情報格差が存在する中では、個々の投資家のリスク資産の最適ポートフォリオは異なるはずである。最近、様々な格差が話題になっているが、運用における情報格差は、改善にコストを要するものの、成績向上の源泉でもある。

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【年金運用における情報格差】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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