- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 家計の貯蓄・消費・資産 >
- ふつうの国”ニッポン”の家計のバランスシート
そこで、総資産に占める株式の割合に替えて、株式を保有している世帯の割合について比較した場合でも、8カ国の実績値は、イタリアの7.2%からスウェーデンの35%の間にとどまっており、日本の値は17.6%となっている。
このように、総資産に占める株式の割合も、株式を保有している世帯の割合も、日本の値は高くはないが、それは8カ国すべてに当てはまっている。
第2に、時価が変動するリスク性資産の総資産に占める割合に基づいて、資産選択が「安全志向」であるかどうかを論ずるのであれば、株式だけではなく、住宅・土地などもリスク性資産に含めたうえで議論すべきだからである。家計が保有する資産に関しては、どこの国でも実物資産の方が金融資産よりもはるかに大きいのに、実物資産を無視してよいという理由は見当たらない。
各国の家計が保有する資産と負債に関しては、他にも共通点が見られる。
例えば、負債に着目すると、11カ国中の7カ国において、総資産に対する割合は11~15%という範囲にとどまっている。この割合が際立って低いのは、4%のイタリアであり、2番目に低い日本の11%の半分にも満たない水準である。逆に、40%のデンマーク、31%のスウェーデンとノルウェーにおいては、他の国々の2倍を超える水準となっている。負債と金融資産の大小関係についても、この3カ国においてのみ、負債が金融資産を上回っている。逆に言えば、日本を含む残りの8カ国では、金融資産が負債を上回り、先に見たように、金融資産を実物資産が上回っている。
このように、家計のバランスシートに関して、総資産に占めるリスク性資産の割合、持家率、金融資産・実物資産・負債の相互関係、正味資産の所得に対する倍率のいずれについても、国際的に共通する傾向や標準的な水準から逸脱していないことが、”ニッポン”の特徴とさえ言えるのである。
かつての「日本異質論」に代表されるように、日本は経済的な常識の通用しない国として激しいバッシングに遭った時代もあるが、そのような言われなき批判を外国から受けることは今では少なくなっている。むしろ、「過度に安全志向の日本」というイメージのように、自らに対して抱く虚像には未だに縛られていると言ったら、言い過ぎだろうか。
1 1世帯当たりの資産と負債に関する11カ国の詳細な比較については、拙稿「国際比較で見る1世帯当たりの資産と負債-11カ国の世帯調査統計に基づいて-11カ国の世帯調査統計に基づいて-」(http://www.nli-research.co.jp/report/econo_report/2007/ke0706.pdf)を参照されたい。
2 スウェーデンに関しては、入居権のみ売買可能な集合住宅も広義の持家とみなした場合。
このレポートの関連カテゴリ
石川 達哉
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2023年11月29日
改正ベトナム保険事業法(5)-生命保険・医療保険(その1) -
2023年11月28日
堅調を維持している2023年上期米国個人生命保険販売-下半期も引き続き増加基調か-ニーズ取り込みに課題も- -
2023年11月28日
気候変動が運輸にもたらす影響-材料の改善や技術の進展により、強靭化が可能な部分もある -
2023年11月28日
キャッシュ・アウト・リファイナンス(Cash Out Refinance)~「住宅を現金化する仕組み」はひとまず終了か? -
2023年11月28日
今週のレポート・コラムまとめ【11/21-11/27発行分】
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2023年07月03日
News Release
-
2023年04月27日
News Release
-
2023年04月03日
News Release
【ふつうの国”ニッポン”の家計のバランスシート】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
ふつうの国”ニッポン”の家計のバランスシートのレポート Topへ