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- 米9月FOMCは4年ぶり、0.5%の利下げを決定
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■見出し
・景気のダウンサイドリスクと金融市場正常化を重視
・FOMC声明文のポイント~市場混乱の波及防止に主眼
・景気重視への転換で利下げ持続の可能性高まる
■introduction
9/18開催のFOMC(米連銀:連邦公開市場委員会)では、5.25%のFF目標金利を0.5%引下げ、4.75%とすることを全会一致で決定した。同金利は昨年6月の利上げを最後に、昨年8月以降、計9回連続のFOMCでの据え置き決定により、ほぼ1年余に渡って同じ水準が続いていた。利下げは2003年6月以来4年3ヵ月ぶり、0.5%幅での利下げは2002年11月以来のことであり、昨年2月に就任のバーナンキ議長にとっては初めての利下げとなる(図表1)。
利下げへの経緯を振り返ると、やはりサブプライム問題からの金融市場の混乱が大きな要因と言えよう。金利据え置きを決定した前回FOMCは8月7日に開催されたが、その2日後にはサブプライム問題が欧州に飛び火して世界的な金融市場の混乱を招き、FRBはECBと協調して緊急資金供給を開始した。さらに8月17日には金融市場混乱への対策として、公定歩合を0.5%引き下げて5.75%とし、FOMCは、必要に応じて措置をとる旨の緊急声明を出した。また、8月末にはブッシュ大統領がサブプライム対策を発表し、バーナンキ議長も緊急声明の主旨を繰り返し表明したこと等から、市場では既に今回FOMCでの利下げを視野に入れていた。
サブプライム問題の影響については、金融市場の混乱が先行したことにより、FRBでは実体経済面への波及の証左を注視していたが、8月雇用者数が4年ぶりに減少すると景気不透明感が急速に高まり、また8月小売売上高も軟調な展開となったため、市場では利下げの見方が大勢となる一方、利下げ幅の大きさに焦点が移っていた。
利下げ幅について、市場では、FRBが、景気のダウンサイドリスクが一層高まったものの直ぐにリセッションに陥るとは見ていないこと、最近の物価指標が落ち着きを見せる中でもなおインフレ圧力への警戒を解いていないこと、等のスタンスをとっていることが窺われるとして直前の予想でも0.25%説が根強かった。確かに、利下げ要因の一つと見られる雇用減はまだ単月に過ぎず、一方、原油価格は過去最高水準に達し、低失業率、高設備稼働率等が持続していること等から、インフレ圧力への警戒が解かれたわけではなく、0.25%説にはそれなりの根拠があると言えよう。
では、なぜ0.5%の利下げに踏み切ったのか。その狙いは、米景気面への梃入れと共に、金融市場正常化への配慮が大きい。実際、8月以降の信用収縮による短期市場の混乱は、これまでの緊急資金供給や公定歩合の引き下げでは効果が限定されており、企業の調達コスト上昇幅は0.25%を大きく越えたものとなっている(図表2)。そのため、0.5%といった大幅利下げを実施することにより金融市場が混乱する以前の短期金利水準に引き戻す効果が期待できる。この点、FRBが、8月17日に0.5%引下げたばかりの公定歩合を、今回さらに0.5%引下げ5.25%としたこともその効果を高めるためと言え、FRBの金融正常化への強い意思が窺える。下記のFOMC声明文にあるように、「金融市場の混乱による経済への影響を未然に防ぎ、今後の成長を促進するため」には一刻も早く正常化する必要があると言うことだろう。
実際、0.5%の利下げは市場のサプライズを招き、特に株式市場では13739ドル(NYダウ)と前日比335ドルの上昇となった。一方、10年国債金利は4.476%と前日比+0.01%と動きは小幅だったが、今後は信用市場金利の動向が注目されよう。
また、FOMCの資料とされるベージュブック(地区連銀経済報告)は、雇用統計の2日前(9/5)に公表されたが、各地区連銀の報告では、緩やかながら景気が拡大し雇用の増加が持続しているとされ、住宅市場悪化の住宅・不動産関連業界以外への波及は限定的とされていた。それだけに8月雇用統計の結果はFRBにとっても驚きだったと思われ、単月の統計とは言え、今回のFOMCの利下げ決断への大きな要因だったことは疑いない。
(2007年09月19日「経済・金融フラッシュ」)
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