単身世帯の4割は60歳以上、3割が65歳以上であることから分かるように、単身世帯の増加に代表される世帯規模の縮小は高齢者世帯の増加と切り離せない。そして、これらは、所得格差が近年拡大傾向にあることとも密接に関係している。高齢者世帯は他の年齢階層と比べて、また単身世帯は二人以上の世帯と比べて、それぞれ世帯間の所得格差が大きいため、高齢者世帯や単身世帯の割合が高まることが社会全体の所得格差を拡大させることになるからである。 それでは、このような高齢化と所得格差との関係は、果たして普遍的なものであろうか。あるいは、日本以外の国でも所得格差は拡大傾向にあるのだろうか。所得格差が拡大している場合、それは高齢化の進行によってもたらされたものなのだろうか。 |
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これらのデータに基づいてジニ係数を実際に計測すると、1980年代半ばから1990年代末までの期間において、上昇傾向が共通して観察される。2000年代前半に関しては、英国とイタリアでは、ジニ係数が低下傾向に転じたのに対して、日本、米国では、そのような基調変化は見られない。しかし、所得格差拡大という現象は、少なくとも、日本特有のものではないと言ってよいであろう。 注目されるのは、高齢化の進行に関して、この4カ国が実に対照的な2グループに分かれることである。日本の65歳以上人口の割合は今や世界最高となったが、その上昇ペースを上回っているのが、総世帯数に対する65歳以上世帯主の割合である。高齢者数が増加しただけではなく、高齢者がこどもとは同居せずに、独立した世帯を形成するケースが多くなったためである。その結果、世帯主65歳以上の世帯が総世帯に占める割合は、1986年から2005年の間に15%から31%へと倍増している。65歳以上人口の割合が世界で2番目に高いイタリアにおいても、日本ほどのペースではないものの、世帯主65歳以上の世帯の割合は上昇基調を続けてきた。しかし、米国と英国に関しては、この割合はほとんど変化していない。 |
このように、米国と英国においては、高齢者世帯の割合が上昇したという事実が観察されないのであるから、前述の所得格差拡大の主因は他にあることになる。日本のほかに高齢化の進行が所得格差拡大の要因となっている可能性があるとすれば、イタリアである。そのイタリアにおいても、高齢者世帯のジニ係数は他の年齢階層と比べて高いので、高齢者世帯の割合が上昇すれば、社会全体のジニ係数が押し上げられる効果があるはずである。 比較の結果を見ると、日本では高齢化の効果が大きく、世帯主の年齢構成が以前と変わらなかった場合には、ジニ係数の右上がりのトレンドさえも消失してしまうほどである。しかし、イタリアでは、年齢構成変化による格差拡大効果は決して大きくない。 以上は、日本のほかには3カ国について見た結果に過ぎない。しかし、現象としての所得格差拡大は、他国でも確かに観察されることは間違いない。同時に、日本と同じ意味での「高齢化」が社会全体の所得格差を拡大させるという構図が、普遍的に成り立っているわけでもなさそうである。 ※ 上記の4カ国に韓国とシンガポールを加えた6カ国における所得格差の実態については、「ニッセイ基礎研究所・経済調査レポート」No.2007-03「国際比較で見る所得格差と高齢化の動向」を参照されたい。 |