- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 企業ファイナンスにおける一考察
日本の株式市場において企業買収や株式の買い集めが日常的に生じるようになった。このため、企業価値や、企業買収に対する防衛策への関心が高まっている。
企業が内部留保を手厚く積んで不要な現預金や有価証券を保有することは、企業価値を引き下げると同時に、企業買収や株式の買い集めを誘発するとされる。
原材料仕入れ代金や賃金等の支払いのタイミングと、売上を現金として回収するタイミングにはずれがある。そのずれを補うため、運転資金として現預金や短期有価証券を保有することが必要である。では、どの程度の量の現預金や有価証券を保有することが望ましいのであろうか。
このことを考えるため、業績変動の激しい電炉業界と、業績が安定している放送業界を取り上げ、比較した。放送業界はここ最近、企業買収や株式の買い集めの対象となってきた業界でもある。
比較によって得られた結論は次のようなものである。
・電炉業界のように業績変動が激しい場合、将来の業績の極端な悪化に備え、現預金や有価証券を豊富に保有しておくことが合理的である。
・放送業界のように業績が安定している場合には、多額の現預金や有価証券を保有する合理的な理由がない。多額の現預金や有価証券を保有することによって企業買収や株式買い集めを誘発するというマイナス効果を考えると、配当支払いや自己株式の取得などの方法を用い、現預金や有価証券の社外流出を図るべきである。
・企業価値の算定や株主総会での議決権行使についても、同じ現預金や有価証券の保有に関して、電炉業界と放送業界とでは異なった評価が与えられるべきである。
(2006年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
このレポートの関連カテゴリ
京都大学経営管理大学院
川北 英隆
研究・専門分野
川北 英隆のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2021/06/03 | 株式市場での格差が目立つ | 川北 英隆 | ニッセイ年金ストラテジー |
2020/06/03 | 日本銀行によるETF 買入がもたらす市場の歪み | 川北 英隆 | ニッセイ年金ストラテジー |
2019/06/05 | 京都の企業の株式はなぜ投資に値するのか | 川北 英隆 | ニッセイ年金ストラテジー |
2018/06/05 | コーポレートガバナンス・コードとPBR1倍割れ企業 | 川北 英隆 | ニッセイ年金ストラテジー |
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年07月26日
職場における温度、匂い、音等は、どういう人がシンドイと思っているのか -
2024年07月26日
米GDP(24年4-6月期)-前期比年率+2.8%と前期から大幅上昇、市場予想の+2.0%も大幅に上回る -
2024年07月26日
お金の流れでみる日本経済 -
2024年07月25日
消えた580兆円~住宅投資をしても残高の増加は限定的~日本の住宅投資はなぜ「資産化」しないのか~ -
2024年07月24日
中国経済の現状と注目点-好調は持続せず、不動産不況と貿易摩擦で弱り目に祟り目の中国経済
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
【企業ファイナンスにおける一考察】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
企業ファイナンスにおける一考察のレポート Topへ