2005年02月01日

2005・06年の税・社会保障負担の動向(II)

篠原 哲

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 昨年末の「平成17年度税制改正」では、定率減税の縮小・廃止がその焦点となった。しかし、定率減税以外にも、過去の税制改正等において決定されている負担増要因もあり、それらを含めた足元への影響は決して小さいものではない。今後も増税・社会保険料引上げの傾向が続くことが想定される。社会保険料については、厚生年金・国民年金保険料の引上げが2017年まで続くうえ、医療・介護保険についても、保険料が今後引き上げられる可能性が高い。税についても、年末にかけて2007年で定率減税の残りを廃止するか否かが検討されることに加えて、2007年度を目処に消費税率が引上げられることも検討されている。このため、今後の景気や消費の動向を検証するうえで、家計の可処分所得を抑制する要因となりうる増税や保険料引上げなどの制度改正の影響を、総合的に把握する必要がある。

このような問題意識の下で、2004年12月に発行したレポート「2005・06年の税・社会保障負担の動向(I)」では、社会保険料控除を通じた税と保険料の相互作用の問題に焦点を当てて、一般的な勤労者世帯における2005年・2006暦年の税・社会保障負担の影響額を試算し、予定される制度改正が家計部門に与える影響を検証した。
本稿では、前回のレポートをさらに進めて、家計の負担額について変化のタイミングを踏まえたうえで、より厳密に試算する。具体的には、住民税についても1月~12月までの税額を試算することで、より現実に即した2005、06暦年における税・社会保障の負担額を把握することを目的とする。実際の制度では、住民税は前年(暦年)の所得にかかり、それが当年の6月から翌年の5月にかけて月給から徴収される。そのため、制度改正による影響の把握という観点からは、住民税額を徴収年度分(当年6月~翌年5月分)ではなく、本稿のように暦年分(当年1月~12月分)に調整したうえでの試算も必要であると考える 。

財政赤字が拡大し、少子高齢化が進む中では、行く行くは増税や社会保険料の引き上げは避けられない。しかし、言うまでもなく、このような負担増は景気やデフレを悪化させることになる。このため、制度改正の実施には、景気や消費動向への配慮が必要となる。過去においても、97年度には消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動も加わって、民間最終消費支出が実質で▲1.0%の減少となり、実質経済成長率は前年の3.6%から0.5%へと大きく減速した。このときは、消費税の引上げのみならず、厚生年金保険料引上げなどの社会保障制度の負担増が重なったことが、消費の落ち込みを予想以上に大きくさせた原因であったと考えられる。
景気や消費への配慮という観点からは、今後の制度改正の検討に際しては、事前に税や社会保障制度改正による影響額を総合的に把握するとともに、それぞれの改正による影響が表面化するタイミングについて考慮することも重要になってくると言える。

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篠原 哲

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