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中国ではWTO 加盟に伴い、保険市場も逐次開放され、外資保険会社が進出し易い環境づくりが急速に高まるその一方で、中国系保険会社も業務拡大や営業拠点を拡充するなどの整備を進めている。ところが、中国国内の経済環境も大変厳しくなっており、株価の急落、金融機関の不良債権問題、失業者急増などの経済問題が、保険業界にもブレーキを掛けつつある。こうした環境の中では、保険市場での競争は一層激しくなり、新商品の開発、新しい募集チャンネルの構築など、新たな動きが注目されている。
2.
80年代後半から90年代にかけて、生保の主力商品は、定期保険、終身保険、養老保険などを中心とする無配当の伝統的な保障型商品であった。90 年代後半以降の銀行預金金利の急激な低下によって、これらの商品に日本と同様の逆ざやの問題が生じるに至ったが、その問題を緩和するため、1999年に投資連結保険(変額保険)が導入された。しかし、2001年後半から、株式市場の低迷の影響で、投資連結保険など投資型保険商品の運用実績が悪化し、トラブルが急増した。その結果、投資型保険商品の人気は急激に下落し、生保会社の逆ざや改善への希望は徐々に薄れたが、その代わりに、配当付き生保商品が人気急上昇した。2002年に入り、生保会社は、銀行と連携して貯蓄型の簡易生保商品を開発し、それを銀行の営業拠点の窓口で販売するというブームが起きている。
3.
中国では、市場の主体に当たる生保会社、各保険仲介業者、個人保険代理人などが、完全に市場経済のルール、または金融サービス産業の規則に基づいて動いているわけではなく、一部の生保会社、各保険仲介業者、生保募集の個人保険代理人を含むサービスを供与する側と保険契約者などを代表するサービスを需要する消費者側との間で、常にトラブルが発生し、消費者の利益を保護する関係法律の整備が遅れているため、消費者側の利益が損なわれたケースが目立っている。
4.
WTO 加盟後の中国生保市場には今後ますます成長できる潜在力があり、大変有望な市場であることは間違いないが、この市場が先進国のように成熟しているわけでもない。特に、保険経営者と消費者との対立、消費者のニーズに合わせた商品設計の不足、保険に関する法整備の遅れ、保険監督官庁の監督体制の不十分さなど、様々な問題が未だ多く存在しているため、どのようにクリアするかが今後の重要な課題となる。
(2004年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
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