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- 株式市場における投資家の行動 -1990年代以降に関する一考察-
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1.
1990年以降、日本の株式市場は株価の大幅な下落を経験した。その株価下落は株式保有構造を大きく変化させる要因ともなっている。すなわち、株式持ち合い構造が崩れ、年金や海外投資家が活躍する市場へと変化を遂げている。
2.
その株式保有構造の変化の中、1990年代から現在にかけて、主要な投資家はいかなる投資行動を採用してきたのか、業種別・投資家別の株式時価保有金額と、業種別株価のデータを用いて簡単に分析してみた。分析期間はデータの関係から、とりあえず1992年度から2002年度としている。主要な分析は次の2つである。
3.
1つは、TOPIX を基準とする業種別株価(すなわち相対的な株価)の変動に対する投資家行動の分析である。具体的には、相対的な株価の上昇(下落)に対して、株式ボートフォリオにおけるその業種の組み入れ比率を下落(上昇)させる、いわゆる逆バリの投資家か、それとは反対に、業種株価の相対的な上昇(下落)に対してその業種の組み入れ比率を上昇(下落)させる順バリの投資家かの分析である。分析の結果、個人投資家は逆バリの投資家だと判明したが、投資信託には目立った特徴がなかった。また、株式持ち合いの解消、保有株式量の削減を図ってきた銀行、生保会社は逆バリ、事業会社はどちらかといえば順バリであった。海外投資家と年金信託は順バリの投資家であったが、年金信託の場合はインデックス運用的な投資スタンスに近いと表現した方が適切かもしれない。
4.
もう1つは、株式投資に関する収益率の分析である。それによれば、個人投資家が保有するポートフォリオの値下がり率はTOPIX 程度と比較的良好であり、投資信託を上回っていた。他方、1990年代に株式投資を積極化させた海外投資家と年金信託は良くなく、とくに年金信託が保有するポートフォリオの値下がり率は大きかった。
5.
11年間のポートフォリオの値下がり率だけでは株式投資の巧拙は判断できないものの、他方で年金信託の順バリ、インデックス運用的な投資スタンスの是非は、熟慮すべき課題だろう。投資スタンスにおいて、年金受給権者である個人の投資スタンスとまったく異なったスタンスの採用が、年金制度の受託者として望ましいのかどうかである。
(2004年03月25日「ニッセイ基礎研所報」)
京都大学経営管理大学院
川北 英隆
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